消えた常連客
毎日のように顔を見せていた常連客が、ある日を境に姿を見せなくなるところから始まるプロット型。当たり前だった日常の欠落を通して、店側の人物の内面が浮かび上がる。
毎日、あるいは決まった曜日に必ず顔を見せていた常連客が、ある日を境にぱたりと姿を見せなくなるところから始まるプロット型である。店の側の人物にとって、それは事件と呼ぶには小さすぎる違和感でしかない。だが、当たり前だと思っていた日常に空いた小さな欠落は、放っておくほど気になっていく。この「気になり方」の描き方こそが、この型の質を決める。
常連客の不在の理由を早々に明かしてしまうと緊張が失われるため、店側の人物が断片的な情報(常連客の職業、住んでいそうな場所、最後に交わした会話)を頼りに、少しずつ手がかりをたどっていく構成が向いている。理由が判明した後、店側の人物がどう行動するか――再会を望むのか、そっとしておくのか――という選択も、この型の書きどころになる。
型のバリエーション
- 常連客の不在の理由が、引っ越しや転職など日常的な事情だったと分かる型。
- 常連客が病を患っており、店に来られなくなっていたと後で判明する型。
- 店側の人物が常連客について実はほとんど何も知らなかったことに気づく型。
- 常連客の不在をきっかけに、店側の人物自身の孤独が浮き彫りになる型。
- 常連客が戻ってくるが、以前とは違う事情や立場を抱えている型。
筋書きの例
- 開店以来欠かさず同じ時間に来ていた常連客が、ある週から姿を見せなくなったことに気づいた喫茶店の店主が、注文票の裏に書かれていた住所らしき文字を頼りに、その人物を探し始める。
- 深夜のコンビニに毎晩決まった時間に来ていた常連客の姿が消え、店員はその不在によって初めて自分が孤独な深夜のシフトをその客の存在で支えられていたことに気づく。
- 数十年通い続けた食堂の常連客が来なくなったことを心配した店主が、入院先の病院まで見舞いに訪れ、これまで交わしたことのなかった長い会話をようやく交わす。
組み合わせやすい題材
関係性の「常連客と店主」、舞台の「商店街」「深夜のコンビニ」と特に相性がよい。テーマの「孤独と連帯」を重ねると、常連客の不在が店側の人物の孤独を映し出す鏡として機能する。