猫
人の都合にはお構いなしに現れ、去っていく存在として機能するモチーフ。人間同士では踏み込みにくい沈黙や距離を、猫を介することで自然にほぐせる。
人の都合にはお構いなしに現れては、気ままに去っていく存在として機能するモチーフである。猫は誰の所有物でもなく、誰にでも等しく無関心なようでいて、時折り特定の人物にだけ懐く。この気まぐれさが、人間同士では踏み込みにくい沈黙や緊張を自然にほぐす役割を果たす。会話の接ぎ穂がない二人の間に一匹の猫が割って入るだけで、場の空気が変わる。
猫というモチーフは、特定の誰かの記憶を媒介する装置としても使いやすい。亡くなった人が可愛がっていた猫、引っ越した人が残していった野良猫――猫自身は多くを語らないが、その存在が人と人、あるいは今と過去をゆるやかに繋ぐ。同じ猫を複数の人物が別々の時期に見ているという構成も、時間の経過を静かに示す手段になる。
型のバリエーション
- 特定の場所に居着いた野良猫が、複数の人物の間を行き来し、関係を緩やかに繋ぐ型。
- 亡くなった、あるいは去った誰かが可愛がっていた猫を、代わりに世話することになる型。
- 猫が苦手だった人物が、ある一匹をきっかけに少しずつ心を開いていく型。
- 猫の失踪や病気が、疎遠だった人間関係を再び動かすきっかけになる型。
- 猫にしか懐かない人物が、猫を通じて初めて他人との接点を持つ型。
筋書きの例
- 商店街の一角に居着いた野良猫が、口をきかない店主同士の間を毎日行き来しているうち、猫の話題だけをきっかけに二人が少しずつ言葉を交わし始める。
- 亡くなった祖母が長年可愛がっていた猫を引き取ることになった孫が、猫の気まぐれな仕草の中に、生前ほとんど会話をしなかった祖母の面影を見つける。
- 人付き合いを避けて暮らしていた人物のベランダに毎晩現れる野良猫が、ある日姿を見せなくなったことで、初めて誰かに心配される側の気持ちを知る。
組み合わせやすい題材
舞台の「商店街」「花屋」、テーマの「孤独と連帯」と特に相性がよい。モチーフの「窓」と組み合わせれば、窓越しに猫を眺める習慣そのものが人物の孤独を映す描写になる。