吾輩は猫である
- 作者
- 夏目漱石
- 発表
- 1905–1906年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
名前のない猫の視点から、飼い主の中学教師とその周囲に集う人々の暮らしと会話を眺めて綴る長編。人間社会を外側から観察する語りの仕掛けを備え、日本の近代小説の出発点の一つとなった。
1905年から雑誌連載として発表され、評判を受けて長編化し、1906年まで続いた。動物の一人称という視点の設定によって、明治の知識人社会の習慣や議論を距離を置いて描くことが可能になり、風刺と写生の方法が結びついた。筋の完結よりも挿話の連なりで進む構成は、連載小説という形式の性格をよく示している。夏目漱石の出発点となった作品であり、語り手の設計そのものが物語の主役になり得ることを示した例として参照される。
この作品が使っている物語の型
- 猫人の都合にはお構いなしに現れ、去っていく存在として機能するモチーフ。人間同士では踏み込みにくい沈黙や距離を、猫を介することで自然にほぐせる。
- 人間と人ならざるもの妖・精霊・付喪神など、人ではない存在と人間との間に結ばれる関係性。種としての違いを都合よく消さず、異質さを保ったまま心を通わせられるかが書きどころになる。