アニメ B-10カメラとショット
密着マルチ・パララックス
別名: マルチ、密着引き、マルチプレーン、視差スクロール
背景を近景・中景・遠景の層に分け、層ごとに違う速さで動かす。平面の絵に奥行きを出す技法。
どういう技法か
マルチは、絵を複数の層に分け、層ごとに異なる速度で動かして奥行きを出す技法である。手前ほど速く、奥ほど遅く動かす。1937年頃にディズニーが最大7層のガラス板を重ねるマルチプレーン・カメラを完成させた例が知られる。日本のアニメでは、層を同じ面の上で速度を変えて引く「密着マルチ」が、デジタル化以後は一般的とされる。
なぜ効くのか
人は移動するとき、近くの物ほど速く、遠くの物ほど遅く視界を流れる(運動視差)。この差から距離を感じ取る。層ごとの速度差は、この知覚の手がかりを平面の絵に与えるので、実際には平らな絵でも奥行きのある空間に見える。フォローやパンと組み合わせると、その空間を移動している感覚が生まれる。層の数が多いほど、距離の段階が細かく伝わる。
やり方
- 背景を近景・中景・遠景の最低3層に分けて用意する
- 手前の層ほど大きく速く、奥の層ほど小さく遅く動かす
- 層どうしの速度の比を決め、カットの途中では変えない
- 層の境目に隙間や不自然な重なりがないか確かめる
使いどころ
フォローで移動を見せる場面、パンで広がりを見せる風景、乗り物の車窓などに使う。一枚絵のパンより空間の手応えが出るので、舞台の広さや距離を印象づけたい場面に向く。
やりすぎ・失敗
層の速度差が大きすぎると、つながりが切れて書き割りのように見える。層を分けずに1枚を動かしただけでは奥行きは出ない。奥の層まで速く動かすと、遠景が近くに見えて距離感が狂う。
AIアニメでの使い方
現在の fantasist.org のモーションコミックは1枚のコマ絵をそのまま動かすため、層ごとの視差は作れない。1枚画像を擬似的に動かす Ken Burns 的な手法でも、奥行きを出すには層に分ける必要がある。将来、コマ絵を前景と背景に分けて発注・切り抜きできれば、同じスクリプトで層ごとに速度を変えて再現できる。
この技法を使ったAIアニメ
まだありません。
出典
- Multiplane camera
マルチプレーン・カメラの原理(奥ほど遅い)と1937年の完成
- もっとアニメを知るための撮影講座 第4回 カメラワークを考える
層ごとに引き速度を変える手法とデジタル時代の密着マルチ
- Ken Burns effect
静止画をパン・ズームで動かす技法と、視差を擬似する手法