漫画 E-08時間・間・テンポ
側面から側面へ(場の空気を見せる)
別名: アスペクト・トゥ・アスペクト、情景のコマ
時間を進めずに、同じ場所の別の側面(風景・物・音の気配)を並べ、場の雰囲気や人物の気持ちを伝える移行。
どういう技法か
McCloudのコマ移行の分類の一つで、時間はほぼ止まったまま、同じ場所・同じ瞬間の異なる側面にカメラを移していく並べ方である。例えば、会話の途中で窓の外の雨、机の上の湯のみ、時計の文字盤を順に見せる。McCloudは、日本の漫画がこの移行を西洋の主流コミックより多く用い、目的地に着くことより「そこにいること」を重んじると論じた。
なぜ効くのか
時間を進めないコマは、読者に物語の筋から一瞬離れて、その場の空気を感じさせる。人物の気持ちを直接言わず、周りの物や景色に託すことで、読者は自分でその感情を読み取る。この読み取りの時間が、感情の深さや余韻として感じられる。筋を進める移行ばかりだと、話は速いが、場の手触りが残りにくい。日本の漫画らしい情緒の多くはこの移行から生まれると説明されることもある。
やり方
- 場の雰囲気を伝えたい場面で、人物から離れた物や景色のコマを2〜3つ挟む
- 選ぶ物は、人物の気持ちや状況を象徴するものにする
- 台詞は入れないか、コマをまたぐ独白やナレーションにとどめる
- 最後に人物のコマに戻り、その表情で場の空気を受け止めさせる
使いどころ
場面の最初に場所の雰囲気を伝える時、感情の山場の前後、人物が言葉にできない気持ちを抱えている場面、物語の終わりの余韻で使う。季節や天候を印象づけたい時にも向く。
やりすぎ・失敗
筋に関係のない物を並べると、読者は意味を探して迷う。多用すると話が進まず、退屈になる。象徴的な物を説明しすぎると、押しつけがましくなる。場の空気を見せるコマの後には、筋を進めるコマを置く。
AIコミックでの使い方
人物の出ないコマは顔の一致の問題がないため、生成が安定しやすく、15コマの中で入れやすい。発注書では場所と時刻・光・天候を前後のコマと完全に一致させ、「同じ部屋の窓際、同じ夕方の光」のように書く。layout JSONでは小さめのコマにし、フキダシは置かないか独白boxにする。
この技法を使ったAIコミック
まだありません。
出典
- Understanding Comics: The Invisible Art(邦訳『マンガ学』岡田斗司夫監訳、美術出版社、1998)
側面→側面の定義と、日本の漫画がこの移行を多く使うとの指摘(第3章)