漫画 E-01時間・間・テンポ
コマ移行の6分類
別名: パネル・トランジション、McCloudの6分類
Scott McCloudが示した、隣り合うコマの間で何が変わるかによる6つの分類。場面の速さと読者の補う量を設計する道具になる。
どういう技法か
McCloudは『Understanding Comics』(1993)で、隣り合うコマの関係を6つに分けた。①瞬間→瞬間(同じ動作のごく短い変化)、②動作→動作(一人の人物の一連の動作)、③主体→主体(同じ場面の中で別の人や物に移る)、④場面→場面(時間や場所を大きく飛ぶ)、⑤側面→側面(時間を止めて場所や雰囲気の別の面を見せる)、⑥無関係(論理的なつながりのない並び)。分類ごとに、読者がコマ間を補う量が違うとされる。
なぜ効くのか
コマの移り方は、読者が間白で頭の中で補う量と、物語の速さを決める。瞬間→瞬間は補う量が少なく、時間がゆっくり流れる。場面→場面は大きく補わせ、話を速く進める。McCloudは、アメリカの主流コミックは動作→動作が中心で、日本の漫画は主体→主体や側面→側面を多く使い、場の雰囲気を味わわせると論じた。分類を意識すると、場面ごとに速さを選べる。
やり方
- 各コマの間に①〜⑥のどれを使っているかをネームに書き込んでみる
- 話を進めたい所は動作→動作・場面→場面を中心にする
- ゆっくり見せたい瞬間は瞬間→瞬間で細かく刻む
- 場の空気を伝えたい所は側面→側面で周囲の物や景色を並べる
- 無関係の並びは、夢や混乱など意図がある時に限って使う
使いどころ
ネームの見直しで、場面の速さが意図どおりか確かめる時に使う。テンポが遅い・速すぎると感じた場面で、どの移行が多いかを数えると原因が見えやすい。他人の作品を分析して、場面の速さの作り方を学ぶ道具としても使える。
やりすぎ・失敗
分類は分析の道具であり、配分の正解を示すものではない。一つの移行ばかりを続けると単調になる。瞬間→瞬間を多用するとページが足りなくなり、場面→場面を多用すると読者がついて来られなくなる。
AIコミックでの使い方
発注書の冒頭に、前のコマとの関係(例:動作→動作、同じ人物・同じ背景、腕の位置だけ変える)を書くと、生成で何を変えて何を保つかがはっきりする。瞬間→瞬間や側面→側面は構図の一致が要るので、共通の背景説明文を使い回す。場面→場面では場所と時刻を明記する。
この技法を使ったAIコミック
- 辺境の鑑定士 第1話「錆びた剣の値打ち」5ページ(鍛冶場→王への献上)
使った理由: 剣が見せる過去を、時代も場所も飛ぶ「場面から場面」の移行でつなぎ、数百年の時間を読者の想像で埋めてもらうため。
出典
- Understanding Comics: The Invisible Art(邦訳『マンガ学』岡田斗司夫監訳、美術出版社、1998)
コマ移行の6分類と、日本の漫画が主体→主体・側面→側面を多く使うとの指摘(第3章)