アニメ E-06撮影・特殊効果
ハーモニー処理と質感の後処理
別名: ハーモニー、止め絵処理、テクスチャ処理、エアブラシ
セル画の平らな塗りを、背景画のような描き込みや質感に置き換えて、特別な一枚として見せる処理。
どういう技法か
ハーモニーは、セルには線画だけを描き、中の色や陰影を背景美術の側で絵画的に描き込んで、背景と一体の一枚絵にする手法である。出﨑統監督の演出の特徴の一つとして、繰り返しショットや画面分割、透過光とともに挙げられる。現在はデジタルの撮影で、ぼかし・テクスチャの重ね・色調補正によって平らなセルに質感を足す処理が広く行われ、撮影部門が担うことが増えていると説明される。
なぜ効くのか
ふだんのアニメの画面は、平らな塗りのキャラと描き込まれた背景という二つの質感でできている。そこへ急にキャラクターまで背景と同じ筆致になると、観客は「時間が止まり、特別な瞬間が絵画として切り取られた」と感じる。質感の差が場面の格を変えるのである。日常のカットでも、光や陰影の後処理はセルと背景の質感の差を縮め、同じ空間にいる感じを強める。
やり方
- 強調したい瞬間を一つ決め、そのカットだけ止め絵にする
- キャラクターを線画だけにし、陰影と色を絵画的に描き込む(またはテクスチャを重ねる)
- 背景と同じ筆致・同じ色調になるようそろえる
- 前後のカットは通常の塗りに戻し、差で特別さを出す
使いどころ
感情の頂点、話の区切り、エンディング直前の決め。日常カットでは、セルと背景をなじませたいときの軽い質感付けに。一枚絵として記憶に残したい瞬間に向く。頻度は作品で一、二度に絞る。
やりすぎ・失敗
ハーモニーを多用すると特別さが消える。質感処理を強くかけると、キャラが背景に溶けて見分けにくくなる。作品全体の画風と合わないと浮き、そこだけ別の作品のように見える。
AIアニメでの使い方
AIコミックのコマ絵は、キャラクターと背景が同じ筆致で描かれた一枚画像なので、もともとハーモニーに近い。逆に言えば、通常カットとの差を作るには、漫画の発注段階で山場のコマだけ「絵画調・筆致を強く」と指定しておき、長めの静止と弱い寄りで見せるとよい。字幕は控えめにし、読み上げも間を取る。
この技法を使ったAIアニメ
まだありません。
出典
- アニメの巨人たち 第6回 出﨑統さん その2
セルは線画のみで背景側で中まで描き込むハーモニーの説明
- アニメの巨人たち 第7回 出﨑統さん その3
出﨑演出の手法としてのハーモニー・透過光・入射光
- もっとアニメを知るための撮影講座 第6回 エフェクトを考える(2)
平らなセルにぼかし・テクスチャ・色調補正で質感を足す処理
- 氷川教授の「アニメに歴史あり」第8回 セル制作と失われたインフラ
セル時代のハーモニーやマスク素材の実物資料についての論考