漫画 H-02人物の演技
感情の段階を顔で見せる
別名: 表情の強弱、複合感情
同じ感情でも弱い・中くらい・強いの段階を描き分け、さらに感情を混ぜて、揺れや移り変わりを顔で見せる技法。
どういう技法か
「怒り」を一つの顔で描くのでなく、不機嫌→苛立ち→激怒のように強さの段階を描き分け、また驚きと喜びなど複数の感情を混ぜた表情を作る技法である。McCloudは『Making Comics』で、基本の感情それぞれに強さの段階があり、それらを混ぜて複雑な感情を作れると提案した。この提案を実験で検証した研究では、強さの段階の読み取りは比較的うまくいったが、混合表情の読み取りは想定より難しかったと報告されている。
なぜ効くのか
感情は一気に切り替わるより、少しずつ変わるほうが自然に見え、読者も変化の過程を追える。段階を並べると、読者はコマのあいだで気持ちの変化を補い、共感しやすくなる。ただし研究結果から、強さの違いは伝わりやすく、混合表情は誤読されやすいと考えられるため、複雑な感情は文脈や台詞の助けと組み合わせるのが安全である。
やり方
- 感情の強さを三段階程度に分け、眉と口の変形量で差を付ける
- 感情の変化は2〜3コマかけて段階的に見せる
- 複雑な感情は、主となる感情を一つ決めて一部の部品だけ別の感情にする
- 混合表情には、状況や台詞で解釈の手掛かりを添える
使いどころ
告白を受ける、真相に気付く、怒りをこらえるなど、気持ちが移り変わる場面。無表情に近い弱い感情が物語上重要なときにも使う。長い沈黙の中で気持ちが少しずつ変わる場面にも向く。
やりすぎ・失敗
段階を飛ばして急に最大の表情にすると、唐突で大げさに見える。混合表情だけで意味を伝えようとすると読み違えられる。全コマ最大強度では山が作れない。強さの配分を話全体で見直す。
AIコミックでの使い方
発注書で「怒り(強さ1/3:口を結び、眉間にわずかな皺)」のように強さを数値と形で書く。同じ人物の段階変化は、顔の角度とサイズを揃えて連続発注すると差が読みやすい。複合表情は生成が不安定なので、台詞・ナレーション(layout JSON の box)で補う前提にする。
この技法を使ったAIコミック
まだありません。
出典
- Making Comics: Storytelling Secrets of Comics, Manga and Graphic Novels(William Morrow/HarperCollins, 2006)
McCloudが表情と身体表現を扱った章を持つ技法書
- Facial expressions in comics: an empirical consideration of McCloud's proposal(Visual Communication 17(4), 2018)
McCloudの表情段階・合成の提案を実験検証、強度の照合は比較的成功
- The Six Fundamental Facial Expressions
六感情の混合で他の感情が生まれるという紹介