企画書
企画案 ― 検疫官のひとりごと
河口の交易都市で、入港する船と荷と人を検める検疫官セラ(28)。病を止めるのが仕事だが、荷の中身と船員の顔色から、病ではないものまで見えてしまう。仕事の手順で謎を解く「職業+ひとりごと」の型。恋愛は薄く、現場の細部が濃い。企画案。
企画案。まだ本文は書いていない。 連載にするかどうかを、この紙で決める。
型は「職業+ひとりごと」。地味な職に就いた主人公が、仕事の手順そのもので事件を解く。文庫のライトノベルで毎年上位に残る形だが、既存作の後宮や薬ではなく、河口の検疫所でやる。学校は舞台にしない。全員18歳以上。
一行コンセプト
病を止める仕事をしていると、 病ではないものまで、見えてしまう。
なぜ「検疫」か
検疫官は、入ってくるものを全部見る。船、荷、人、書類。しかも「通す」か「止める」かを、その場で一人で決める。だから、密輸も、偽の身分も、隠された死も、検疫官の目の前を必ず通る。探偵を置く必要がない。仕事をしているだけで、事件のほうから来る。
主人公は推理をしない。手順を踏む。荷を開け、匂いを嗅ぎ、船員の脈を取り、書類の日付を突き合わせる。その手順の途中で、矛盾が一つ見つかる。矛盾を放っておけないのは、それが病の兆候の見方と同じだからだ。
主人公 ― セラ・ヴォート 28歳
河口都市ハルモントの検疫所の三番官。三番官は現場の最下級で、いちばん多く船に乗る。無口。声に出さない「ひとりごと」が地の文になる(口に出すのは手順の言葉だけ)。
弱点:人の嘘を見つけるのが早すぎて、見つけたあとどうすればいいか分からない。だから、たいてい黙って「止める」。止められた側が怒鳴り込んでくるところから、話が動く。
骨組み(第1巻 全12話)
一話に一隻。入港する船一隻ごとに、一つの謎。軸は三つで、検疫所の日常/セラが十年前に止められなかった船(第1巻の縦糸)/上番官イグナス(十年前はセラの指導役だった三番官)の過去。三つが第12話で交わる。
| 話 | 船 | 起きること |
|---|---|---|
| 1 | 塩の帆船 | 熱病の疑いで止めた船に、病人がいない。代わりに、荷の塩が湿っている。名簿の日付のずれだけは、その場で解く |
| 2 | 河上りの平底船 | 船員が一人多い。名簿と顔が合わない |
| 3 | 南の香料船 | 香料の匂いが強すぎる。何かを隠す匂い |
| 4 | 亡命者の小舟 | 病ではないが通せない。決まりを曲げて黄旗にする |
| 5 | 王家の御用船 | 検めてはいけない船を、検めた |
| 6 | 沈没船の引き揚げ荷 | 十年前に沈んだ船の荷。セラが止められなかった船 |
| 7 | 北の氷船 | 氷の中に、人 |
| 8 | 巡礼の客船 | 三百人の脈を一日で取る |
| 9 | 検疫所そのもの | 内部の不正。書類の日付 |
| 10 | 無人の帆船 | 全員がいない。荷は無事。赤旗で隔離島へ曳く |
| 11 | イグナスの船 | 上番官が十年前に乗っていた船 |
| 12 | 塩の帆船(再) | 第1話の船が戻ってくる。塩が湿っていた理由 |
この作品の売り
- 手順が面白い。検疫の一日(旗の色、船名簿、脈、荷の開封順、隔離の決まり)を、毎話少しずつ見せる。読者が三話で検疫官の目になる
- 謎が小さい。死体は出ない話が多い。「塩が湿っている」程度の違和感を、一話かけて解く
- 主人公が説明しない。セラの内心は全部「ひとりごと」で読者だけが聞く。周りの人物は、セラが何を見ているか分からないまま、結果だけを受け取る
語りと文体
- 三人称一元・セラ寄り。地の文にセラの「ひとりごと」を括弧なしで混ぜる
- 会話は短い。手順の言葉(「開けます」「脈を取ります」「止めます」)が繰り返し出る
- 一話 6,000〜9,000字。九日に一話(連載に上げるなら回転に入れる)
リスクと、どう避けるか
- 地味。→ 一話に一隻、船ごとに絵になる荷(塩、香料、氷、三百人)を置く
- 医学の描写が実在の病と混ざる。→ 病名は全部架空。症状も架空のものにし、本文冒頭に「作中の病と処置は架空」と明記する
- 既存の「職業+ひとりごと」と似る。→ 後宮・薬・毒は使わない。舞台は港、道具は帳簿と旗と脈
守る線
全員18歳以上。学校・学生を舞台にしない。実在の人物・団体を出さない。非同意を肯定的に描かない。既存作品の固有名詞・固有の仕組みを持ち込まない。作中の病・薬・処置はすべて架空で、実在の医療の用法ではない。