マウス
Maus
- 作者
- アート・スピーゲルマン
- 発表
- 1980–1991年
- 国
- アメリカ
- 媒体
- 漫画
作者が父から聞き取ったホロコーストの体験と、その聞き取り自体をめぐる父子の関係を描いたグラフィックノベル。1980年から雑誌RAWで連載され、1986年と1991年に二巻の単行本としてまとめられた。
登場人物は民族や国籍ごとに動物の頭部で描き分けられ、ユダヤ人はねずみ、ドイツ人は猫、ポーランド人は豚が割り当てられている。個々の顔はほとんど描き分けられず、種が身分証のように機能するため、読者は誰がどの側に置かれているかを常に意識させられる。作中では人物が別の種の仮面をかぶる場面も描かれ、この分類が語り手の側の便宜であることが作品自身によって示される。擬人化を愛らしさのためではなく、分類が人を殺す構造の可視化に用いた例として参照される。
この作品が使っている物語の型
- 語られなかった歴史近しい相手にすら明かされなかった過去が、何かをきっかけに明らかになっていく主題。語らなかった理由そのものが人物像の核心に関わる。
- 親と子(成人した)子育てを終えた後の親子関係を描く関係性。保護する側とされる側という力関係が対等に近づいていく過程で、互いの呼び方や距離の取り方が変化していく。
- 記憶覚えていること・忘れること・思い出し方そのものを主題にするテーマ。記憶の欠落や改変を扱う場合、何が「真実」かを最後にどう定めるかが設計の核になる。
- 擬人化道具や場所、暦といった人でないものに人の形と気性を与える型。元の物が持つ性質を人の振る舞いに翻訳できているかどうかで、成否が分かれる。