企画書
企画案 ― サービス終了日に、俺たちは最後のダンジョンへ潜る
九年続いた仮想世界の遊戯が、今夜、保守の時刻である午前三時で終わる。三十代になった元・常連の五人が、最後の夜に集まって、誰も踏破していない底へ潜る。三時を過ぎても、世界は消えなかった。閉じた世界に閉じ込められる型を、学生ではなく仕事と家庭を持つ大人でやる。企画案。
企画案。まだ本文は書いていない。 連載にするかどうかを、この紙で決める。
型は「閉じた世界の攻略」。仮想世界に閉じ込められ、階層を降りて出口を探す。文庫のライトノベルで定番の形だが、参加者を三十代の社会人にする。明日の仕事、留守番の家族、期限の支払い。そういうものを外に置いたまま、閉じ込められる。学校は舞台にしない。全員18歳以上。
一行コンセプト
終わるはずだった世界が、終わらなかった。 出口は、誰も踏破していない最下層にしかない。
なぜ「サービス終了日」か
九年続いた遊戯には、九年ぶんの記憶がある。友達、恋、喧嘩、抜けた人、死んだ人。サービス終了の夜は、その全部に一度に別れを言う夜だ。だから元・常連が集まる。集まった夜に、世界が終わらない。
閉じ込められる理由を最初は書かない。読者に見せるのは、三時を過ぎても消えない街の灯と、外へ戻る手段が一つも効かないことだけ。理由は第12話で半分。
主人公 ― 三十四歳、五人
一人の主人公ではなく、五人の視点を回す。ただし軸は一人。
- ユウキ(34): 九年前の常連の一人。いまは印刷会社の営業。妻と娘(六歳)。集まりに来たのは、義理。軸の視点
- マコト(35): 元・攻略組の指揮役。いまは独立して失敗し、借金がある。最後の夜にいちばん本気なのはこの人
- ハルナ(33): 元・回復役。看護の仕事で夜勤明けに来た。現実の身体のことをいちばん知っている
- ソウ(36): 元・情報屋。ずっと遊戯に残っていた。九年、一度も抜けていない。閉じ込められて、いちばん困っていないように見える
- リン(31): 九年前は二十二だった末っ子。いまは事務職。皆が知らないうちに、遊戯の中で結婚していた(相手は五十層の街の住人。第9話まで出てこない)
骨組み(第1巻 全12話)
軸は三つで、底へ降りる/外の世界で流れる時間(閉じ込められてから何日か。仕事、家族、支払い)/九年前に抜けた人たち。三つが第12話で交わる。
| 話 | 階層 | 起きること |
|---|---|---|
| 1 | 街 | 最後の夜。三人が集まる。午前三時。世界が消えない。「戻る」が効かない |
| 2 | 一〜十層 | ソウが合流。九年前のやり方が、まだ通じるか。通じる。身体だけが追いつかない |
| 3 | 十一〜二十層 | 外の時間。ユウキの娘の発表会は、もう終わっている。ハルナが「ここで寝ると、外の身体はどうなるか」を言う。灯に戻されるたびに、街の灯の色が一段沈む |
| 4 | 二十一〜三十層 | リンが合流。他の閉じ込められた人たちと会う。全員、三十代以上 |
| 5 | 街に戻る | マコトが指揮を取り戻す。借金の話。「ここで死ぬのと、外で死ぬのと」 |
| 6 | 三十一〜四十層 | 九年前に抜けた人の名前が、階層の記録に残っている |
| 7 | 四十一〜五十層 | 誰も踏破していない層に入る。地図が無い |
| 8 | 五十層の街 | 中間の街(街から灯で直通の裏道がある)。閉じ込められた人が百人。運営の人間が一人いる |
| 9 | 五十一〜六十層 | リンが「結婚していた」と言う。相手は五十層の街にいる。リンは降りる |
| 10 | 六十一〜七十層 | ソウが九年抜けなかった理由 |
| 11 | 七十一〜八十層 | ハルナの外の身体の話。誰かが先に「戻る」 |
| 12 | 八十層 | 底に見える、偽の底。出口がある。出口は一人分。誰が戻るか。理由の半分 |
この作品の売り
- 大人の閉じ込め。明日の仕事、家族、支払いが「外」にある。剣より先に、それが重い
- 九年の記憶。街の一角、抜けた人の名前、昔の喧嘩。全部が伏線になる
- 五人の視点。同じ層を、別の人が別の理由で降りる
- 出口が一人分。第1巻の終わりで、五人が一人を選ぶ
語りと文体
- 三人称多元。一話ごとに視点を替え、ユウキに戻る
- 遊戯の仕組みは既存作品の用語を使わず、この作品の言葉で作る(「層」「街」「戻る」)。数値の表示や技名の叫びは書かない
- 一話 6,000〜9,000字。九日に一話(連載に上げるなら回転に入れる)
リスクと、どう避けるか
- 既存の閉じ込め型と被る。→ 学生を出さない。数値を出さない。死んだら現実でも死ぬ、という仕掛けを使わない(外の身体は「眠っている」だけ。それが別の恐怖になる)。終了時刻・年数・層の数は、既存作と同じ数字を避けて決めた
- 五人が多い。→ 第1話で五人を全員出さない。三人から始めて、二人は第2話・第4話で合流する
- 暗い。→ 九年前の馬鹿話を毎話一つ入れる
守る線
全員18歳以上。学校・学生を舞台にしない。実在の人物・団体・実在のゲームを出さない。非同意を肯定的に描かない。既存作品の固有名詞・固有の仕組み(数値表示、技名、特定作品の死の仕掛け)を持ち込まない。