こころ
- 作者
- 夏目漱石
- 発表
- 1914年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
「先生」と呼ばれる人物と学生の交流を描く前半と、先生の過去を明かす長い手紙の後半からなる長編。友情と恋のあいだで生じた罪の意識を抱え続ける人間を描き、日本近代文学の代表作の一つに数えられる。
1914年に新聞連載ののち刊行された。物語の核心を当事者の手紙という形式で開示する構成が特徴で、語り手の交代によって同じ出来事が異なる重みを帯びる。明治の終わりという時代の区切りと、個人の内面の決着を重ね合わせた点でも論じられることが多い。罪悪感と自己処罰という主題を、劇的な事件よりも静かな心理の推移で追う書き方は、日本の心理小説の一つの基準となった。
この作品が使っている物語の型
- 裏切り信頼していた相手に裏切られる、あるいは自分が裏切る側に回るテーマ。裏切りの動機に必然性を持たせられるかどうかが、物語の説得力を左右する。
- 償い過去に誰かを傷つけた人物が、その埋め合わせのために行動するテーマ。許しを得ることをゴールにせず、償う行為そのものに意味を持たせられるかが鍵になる。
- 手紙書かれた言葉が時間差で届くという性質を持つモチーフ。会って話せば済むことをあえて手紙にする理由を作れると、単なる小道具を超えた重みが出る。
- 三角関係一人を巡って二人が対立する、あるいは一人が二人の間で揺れるプロット型。誰が「悪者」にもならない設計にできるかが、物語の後味を決める。