痴人の愛
- 作者
- 谷崎潤一郎
- 発表
- 1924–1925年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
堅実な会社員譲治が、カフェで見つけた15歳のナオミを理想の女性に育てようと引き取るが、成長した彼女に翻弄され支配される側へ転落していく長編。育成の欲望が反転する過程を戯画的に描いた問題作。
1924年から1925年にかけて連載された。相手を自分好みに作り上げようとする欲望が、作り上げた当の相手への隷属に反転するという構造を、被害者を自称する男の一人称で語らせ、語り自体の滑稽さで批評を成立させている。西洋への憧れと劣等感が絡んだ時代の空気を映す風俗小説でもあり、「ナオミズム」という流行語を生んだ。育てる恋愛の危うさを扱う物語の、日本における原点といえる。
この作品が使っている物語の型
- 禁じられたもの掟や法、身分、道徳によって手を出すことを禁じられた対象に惹かれていく人物を描くテーマ。禁止の正当性を丁寧に描くほど、それを踏み越える重みが増す。
- 訳あって同居恋愛でも家族でもない事情により、やむを得ず同じ屋根の下で暮らすことになった二人の関係。期間の定めなく続く共同生活の距離感を扱う。