高瀬舟
- 作者
- 森鴎外
- 発表
- 1916年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
弟殺しの罪で島流しになる喜助が、護送の高瀬舟の上で同心に身の上を語る短編。病苦の弟に頼まれて死なせた経緯と、財産も無いのに満ち足りた表情の謎を通じ、安楽死と知足という二つの問いを静かに提示する。
1916年に発表された。罪人と護送役の同心という関係を、夜の川舟という閉じた空間に置き、語りと聞き手の構図だけで倫理の問題を浮かび上がらせる。弟の死を望んだのは弟自身であり、喜助の行為は罪なのかという問いに作品は答えを出さず、同心の腑に落ちない気持ちのまま舟を進ませて終わる。答えの出ない問いを答えの出ないまま完結させる短編の作法として、教科書でも長く読まれてきた。
この作品が使っている物語の型
- 兄弟姉妹生まれた時から比較され続ける、あるいは互いをよく知りすぎているという特有の距離感を持つ関係性。血のつながりゆえに断ち切れない結びつきが物語の軸になる。
- 正義の代償正しいことをした結果、当人が何かを失っていくというテーマ。正義を貫くこと自体は否定せず、その正しさが誰かを傷つける構造を丁寧に描くと安易な勧善懲悪から抜け出せる。