細雪
- 作者
- 谷崎潤一郎
- 発表
- 1943–1948年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
大阪船場の旧家に生まれた四姉妹の日常と、三女の縁談をめぐる歳月を描く長編。戦時の中断を挟んで戦後に完結し、失われつつあった上方の生活文化を細部まで書き留めた記録性でも評価が高い。
1943年に連載が始まったが時局に合わないとして中断され、戦後の1948年に完結した。大事件を置かず、縁談・花見・洪水といった出来事の反復で時間の経過そのものを主題化する構成は、家族の物語の一つの極致とされる。四人の姉妹それぞれに異なる時代との距離感を割り当て、旧い生活様式が静かに終わっていく過程を、哀惜と観察の両方の眼で描いている。姉妹ものの群像劇の参照点として現在も読まれる。
この作品が使っている物語の型
- 兄弟姉妹生まれた時から比較され続ける、あるいは互いをよく知りすぎているという特有の距離感を持つ関係性。血のつながりゆえに断ち切れない結びつきが物語の軸になる。
- 老いと成熟時間の経過によって身体や立場が変化していく人物を通して、若さの喪失を悲劇としてではなく、別の強さの獲得として描くテーマ。
- 過去を美化する苦しかったはずの過去や失われた関係を、時間の経過とともに美しい記憶として塗り替えてしまう心理を描くテーマ。記憶の不確かさを扱う。