山月記
- 作者
- 中島敦
- 発表
- 1942年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
詩人としての名を求めながら果たせず、虎に姿を変えてしまった男が、旧友に自らの半生と心情を語る短編。中国の古典に取材し、自尊心と羞恥をめぐる寓話として教科書でも長く読み継がれている。
1942年に発表された。唐代の伝奇を下敷きに、変身という怪異を内面の問題として語り直す構成を持つ。才能への執着と、それを人前に晒せない羞恥をめぐる自己分析の語りは、才能と承認の問題を扱う物語の語彙として広く共有されるようになった。漢文の教養に裏打ちされた格調ある文体と、近代的な自意識の主題との結合が特徴で、古典に取材して現代の問いを彫り出す短編の方法を示した作品として位置づけられる。
この作品が使っている物語の型
- 人間と人ならざるもの妖・精霊・付喪神など、人ではない存在と人間との間に結ばれる関係性。種としての違いを都合よく消さず、異質さを保ったまま心を通わせられるかが書きどころになる。
- 天才と凡人才能の差という動かしがたい事実の前で、凡人がどう生きるかを描くテーマ。天才を打ち負かす話にせず、才能に対する敗北を抱えたまま歩み続ける姿勢を描くと深みが出る。
- 期待に応える重荷周囲からの期待に応え続けることが、いつの間にか本人の意志を置き去りにしていく重さを描くテーマ。応えることをやめた瞬間に何が起きるかが焦点になる。