砂の女
- 作者
- 安部公房
- 発表
- 1962年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
昆虫採集に訪れた砂丘の村で、砂穴の底の家に閉じ込められた男が、脱出を試み続けるうちに穴の生活へ順応していく長編。不条理な状況を即物的な描写で積み上げ、自由と定住の意味を問い直す戦後文学の代表作。
1962年刊行。絶えず流れ込む砂という物理的な圧力が、脱出の試みを退ける壁であると同時に、穴の中の生活へ意味を与える労働の対象にもなるという両義性を持つ。逃げる自由を得た瞬間に逃げないことを選ぶ結末は、居場所とは何かという問いを読者に手渡す形になっており、監禁譚でありながら定住の物語として読める点が特異である。二十数か国語に翻訳され、国際的にも広く読まれてきた。
この作品が使っている物語の型
- 土地に縛られる生まれ育った土地や家業のしがらみから離れられない、あるいは離れることに罪悪感を覚える心理を描くテーマ。自由と根の間の葛藤を扱う。
- 逃げるという選択困難や責任から逃げることを、単なる弱さではなく一つの主体的な選択として描き直すテーマ。逃げた先で何を得るかに焦点を当てる。
- 居場所を作る元々存在した場所に馴染むのではなく、自分の手で新しい居場所を築き上げていく過程を描くテーマ。孤立していた人物同士が場そのものを作り出す点に焦点がある。