小さなトロールと大きな洪水
Småtrollen och den stora översvämningen
- 作者
- トーベ・ヤンソン
- 発表
- 1945年
- 国
- フィンランド
- 媒体
- 小説
ムーミントロールと母が、行方の分からない父を探して洪水の中を旅する物語。スウェーデン語で書かれたムーミンシリーズの第一作で、以後の小説や新聞連載漫画を通じて独自の生き物たちの体系が積み上げられていった。
主人公は妖精でも動物でもないトロールという架空の族として設定され、丸みのある体と大きな鼻という共通の骨格を親子で共有する設計になっている。族という単位を先に決めておくことで、巻を重ねて新しい登場人物を足すたびに姿かたちを一から考え直す必要がなくなり、後の巻で加わるスナフキンやミイのように族も体格も異なる者を同じ画面に並べても世界が破綻しない。第一作の絵柄は後年広く知られる姿とは異なっており、輪郭が単純化されていった経緯が版を追って確認できる。
この作品が使っている物語の型
- 人間と人ならざるもの妖・精霊・付喪神など、人ではない存在と人間との間に結ばれる関係性。種としての違いを都合よく消さず、異質さを保ったまま心を通わせられるかが書きどころになる。
- アイデンティティの探求自分が何者であるかを、出自や役割ではなく自分自身の選択によって定義し直そうとする人物を描くテーマ。答えを外から与えず、迷う過程そのものを中心に据える。
- 居場所を作る元々存在した場所に馴染むのではなく、自分の手で新しい居場所を築き上げていく過程を描くテーマ。孤立していた人物同士が場そのものを作り出す点に焦点がある。
- 族に共通する形同じ族に属する者が一箇所を必ず共有しているという設定。共通点を先に立てておくからこそ、そこから外れた個体の意味が際立つ。