檸檬
- 作者
- 梶井基次郎
- 発表
- 1925年
- 国
- 日本
- 媒体
- 小説
得体の知れない不安に取り憑かれた青年が、果物屋で買った一顆の檸檬を丸善の画集の上に置き、それを爆弾に見立てて店を出る短編。鬱屈と鮮烈な感覚描写を結晶させた、昭和文学屈指の名短編。
1925年に発表された。筋らしい筋を持たず、色彩と重さと冷たさという感覚の記述だけで青年の内面を可視化し、檸檬一個が世界への静かな反逆の道具に変わる想像の飛躍で締めくくる。病と貧窮の中で書かれた掌編ながら、憂鬱を美に転化する方法の見本として後世の作家に愛され、詩と散文の境界に立つ日本語短編の到達点とされる。舞台となった京都の書店には、今も檸檬を置いていく読者が絶えないという。
この作品が使っている物語の型
- 集団の中の孤独大勢に囲まれていながら誰にも本心を明かせない孤独を描くテーマ。物理的な独りではなく、心理的な隔たりに焦点を当てる。
- 日常が壊れる一日何の変哲もない一日の中に、それまでの日常を根底から変えてしまう出来事が紛れ込む主題。事件の大小よりも「その日から何かが違って見える」感覚を描く。