蒸気船ウィリー
Steamboat Willie
- 作者
- ウォルト・ディズニー、アブ・アイワークス
- 発表
- 1928年
- 国
- アメリカ
- 媒体
- 映画
蒸気船の下働きのねずみが、船長に叱られながら船上の動物たちを楽器に見立てて騒ぎを起こす短篇アニメーション。音と画を同期させた作品として公開され、ミッキーマウスが広く知られる契機となった。
主人公の造形は、頭・耳・胴を円で構成し、輪郭を単純な図形の組み合わせに還元する方針で作られている。耳は顔の向きが変わっても二つの円として描かれ、正面性を保ったまま動かせる。枚数の多い動画作業でも作画の揺れが出にくく、小さな画面や遠景でも判別できる形になる。黒い体に白い顔、大きな靴という明度の配分も、単色フィルム上で手足の動きを追いやすくするための処理であり、キャラクター設計が制作工程と再生環境の制約から逆算されている例として挙げられる。
この作品が使っている物語の型
- 人間と人ならざるもの妖・精霊・付喪神など、人ではない存在と人間との間に結ばれる関係性。種としての違いを都合よく消さず、異質さを保ったまま心を通わせられるかが書きどころになる。
- 主従(執事・従者)仕える側と仕えられる側という制度的な上下関係を持ちながら、生活の最も近い距離で過ごすことで生まれる特殊な親密さを持つ関係性。忠誠の裏にある個人としての感情の揺れが書きどころになる。
- マスコットという形式一体で完結し、記号として覚えられることを前提に置かれた登場人物の形式。造形が単純であるほど、その一点が崩れたときに異変の合図として強く働く。
- 影絵で見分ける顔が見えなくても輪郭だけで誰かが分かる、という約束を物語に持ち込むモチーフ。形が名前の代わりを務めるぶん、形が狂った瞬間に人物の同一性が揺らぐ。