引っ越し・新生活
見知らぬ土地での新生活の始まりを起点に展開するプロット型。土地に馴染んでいく過程そのものを、そのまま人物の変化として描けるかが要になる。
進学、就職、あるいは何かから逃れるためなど、理由はさまざまだが、見知らぬ土地での新生活の始まりを起点に展開するプロット型である。荷解きの終わらない部屋、道に迷う通勤路、名前もまだ覚えていない隣人――新生活特有の頼りなさそのものが、この型の書き出しの推進力になる。土地に馴染んでいく過程を段階的に描けば、それがそのまま人物の心情の変化と重なる構成になる。
この型で気をつけたいのは、新生活を単なる舞台転換として消費してしまわないことである。なぜその土地に来る必要があったのか、以前の生活で何を置いてきたのかという背景があるほど、新生活の一つ一つの出来事に重みが出る。土地に馴染むことがゴールなのか、それとも新しい土地でもなお馴染めない何かが残るのかという結末の設計も、物語の後味を大きく左右する。
型のバリエーション
- 何かから逃げるように引っ越してきた人物が、新しい土地でゆっくりと立ち直っていく型。
- 新生活の中で出会った隣人や同僚との関係が、思いがけず物語の中心になる型。
- 引っ越し先が以前住んでいた誰かの痕跡を色濃く残しており、それに触れていく型。
- 何度も引っ越しを繰り返してきた人物が、初めて「ここに留まりたい」と思う土地に出会う型。
- 新生活になじめないまま、以前の土地への未練を引きずり続ける型。
筋書きの例
- 離婚を機に一人で見知らぬ町へ越してきた人物が、隣人との些細なやり取りを重ねるうち、新しい生活のペースを少しずつ取り戻していく。
- 転勤族の家庭に育ち、これまで何度も引っ越しを繰り返してきた人物が、今度の土地でだけは離れがたいと感じる理由に気づいていく。
- 空き家だった古い一軒家に越してきた新婚の夫婦が、前の住人が残した庭木の手入れの仕方を近所の老人に教わりながら、少しずつ町の一員になっていく。
組み合わせやすい題材
舞台の「商店街」「港町」、関係性の「隣人」と特に相性がよい。テーマの「都会と故郷」を重ねれば、新生活の土地と以前の土地との対比をより明確に描ける。