都会と故郷
出て行った土地と戻る土地の間で揺れる人物を描くテーマ。都会を成功、故郷を停滞と単純に対置せず、両方に別々の重力があることを描くと物語が立体的になる。
進学や就職で出て行った都会と、家族や幼馴染が待つ故郷という、二つの土地の間で揺れる人物を描くテーマである。都会を成功や自由の象徴、故郷を停滞や束縛の象徴として単純に対置してしまうと、どちらの土地も薄っぺらくなる。都会には都会なりの孤独と匿名の心地よさがあり、故郷には故郷なりの息苦しさと安心があるという、両義性をどちらの土地にも持たせることが肝心である。
書き手として面白いのは、どちらの土地に「帰る」のかという結論そのものより、その決断に至るまでに人物が両方の土地で何を得て何を失ったかという収支である。都会での挫折を理由に故郷へ逃げ帰る話にしてしまうと単純化されるので、都会での小さな手応えを一つは残しておくと、選択に重みが出る。
型のバリエーション
- 都会での成功を手にしかけたところで、故郷の事情(家業、親の病)が引き戻す型。
- 帰郷するたびに変わらない故郷に苛立ちながらも、離れられない理由を持つ型。
- 都会に染まりきれなかった人物が、故郷でも異物として扱われる、どちらにも居場所がない型。
- 故郷を出た者と残った者、それぞれの視点を交互に描き、互いの選択への羨望を対比する型。
- 都会での生活を経たからこそ、故郷の価値に初めて気づく型。
筋書きの例
- 都会で数年働いた後、家業の窮状を知って帰郷した人物が、かつて息苦しくて逃げ出した町の人間関係の濃さに、今度は救われる側になっていく。
- 進学で東京に出た幼馴染と地元に残った幼馴染が、盆に一度だけ顔を合わせるたび、互いの選ばなかった人生を羨む気持ちを隠しきれずにいる。
- 都会の会社を辞めて故郷の商店街に戻った人物が、周囲の「都落ち」という視線と自分自身の中の劣等感の両方と折り合いをつけていく。
組み合わせやすい題材
舞台の「商店街」「港町」と組み合わせると、故郷の具体的な手触りを描きやすい。テーマの「世代の継承」と重ねれば、故郷に戻る理由に家業や役目の継承という実利的な事情を持たせられる。