アルジャーノンに花束を
Flowers for Algernon
- 作者
- ダニエル・キイス
- 発表
- 1959年
- 国
- アメリカ
- 媒体
- 小説
知的障害を持つ青年チャーリイが脳手術で天才となり、やがて実験マウスのアルジャーノンの退行から自分の未来を悟る物語。誤字だらけの経過報告が変化していく形式そのもので知性の獲得と喪失を描く。
短編は1959年、長編版は1966年に発表された。主人公自身が書く経過報告の文章の巧拙が、知能の上昇と退行をそのまま可視化するという形式の発明が本作の心臓であり、文体が物語装置になり得ることを示した金字塔である。知能を得て初めて、かつての自分が周囲に笑われていたと理解する中盤の痛みは、賢さと幸福が別物であるという問いを読者に突きつける。最後の一文の願いは、SF史上最も愛される結びの一つである。
この作品が使っている物語の型
- 天才と凡人才能の差という動かしがたい事実の前で、凡人がどう生きるかを描くテーマ。天才を打ち負かす話にせず、才能に対する敗北を抱えたまま歩み続ける姿勢を描くと深みが出る。
- 才能の枯渇かつて確かにあった才能が、加齢や環境の変化によって失われていく恐怖と向き合うテーマ。才能に自己を重ねてきた人物ほど、その喪失は存在の危機になる。
- ノート・日記帳書き手の本音や記録が積み重なる紙面そのものが手がかりになるモチーフ。誰かに読まれることを前提としない筆致だからこそ、そこに宿る本心の重みが増す。