原画と動画、タイミングの付け方—コマ打ち・タイムシート・中割り

「1秒24枚を描かないといけない」と聞いて、アニメを作るのを諦める人は多い。実際には、日本のテレビアニメがそんな枚数で作られていることはほとんどない。この記事では、1秒あたり何枚必要なのか、その枚数をどう配るのか、そして描いた絵が動いたときに崩れる原因は何かを順に扱う。絵コンテが上がった次の工程の話である。

1秒に何枚描くのか

まず前提として、映像は1秒24コマで作られる。ここで言うコマは「表示される時間の枠」であって、絵の枚数ではない。この24枠に同じ絵を何枚並べるかを決めるのがコマ打ちだ。

日本語版Wikipediaの解説では、コマ打ちは「1秒あたり24コマを描画するアニメーションデータに対し、数コマずつ同一の絵を描画する手法」と説明されており、次のように整理されている。

同じ解説には「アニメでは3コマ打ちあるいは2コマ打ちが標準的である」とある。3コマ打ちだけが正解ではなく、2コマ打ちも標準の側に入っている。この2つのどちらを基準にするかは、作品の性質と自分の手数で決めてよい。

いずれにせよ、3コマ打ちなら1秒は8枚、2コマ打ちでも12枚で足りる。10秒の作品が240枚ではなく80〜120枚になる。これは個人でも手が届く数字だ。

そして作品全体で一つに固定する必要も無い。同じ解説でも、これらは作品内で組み合わせて使われるとされている。ゆっくりした芝居は3コマ、速い動きや細かい仕草だけ2コマ、という混ぜ方が普通に行われている。

タイムシートは「いつ、どの絵を出すか」の表

描いた絵を、どのコマでどれだけ表示するかを指定する書類がタイムシートである。縦にコマ(フレーム)、横に層(レイヤー)が並ぶ表で、セルにその瞬間に表示する絵の番号を書く。層はA、B、Cとアルファベットで呼ばれ、たとえばキャラクターがA層、手前の小物がB層、といった使い分けをする。

デジタルの作業でも構造は同じだ。OpenToonzの公式マニュアルでは、Xsheetの縦の行がフレーム、縦の列が層にあたり、セルには各アニメーションレベルの絵への参照が入ると説明されている。同じ絵を複数のセルから参照できるため、同じ絵を何コマ表示しても絵は1枚で済む。ここがタイムシート方式の要点で、絵の枚数と表示時間が切り離されている。

OpenToonzには、この操作を直接おこなうコマンドが用意されている。マニュアルによれば Step 2 / Step 3 / Step 4 は選択したセルを繰り返して2コマ打ち・3コマ打ち・4コマ打ちにするコマンドで、Each 2 / Each 3 / Each 4 は逆に、選択範囲から2つに1つ・3つに1つだけ残して他を削るコマンドである。1コマ打ちで描いたものを後から3コマ打ちに落とす、といった調整が数クリックでできる。

Kritaのようなペイントソフトにもフレーム単位のアニメーション機能があり、公式マニュアルでは初心者向けに12フレーム毎秒(=2コマ打ち相当)が推奨されている。オニオンスキン機能で前のフレームを赤、次のフレームを緑で重ねて表示できることも説明されており、中割りを描くときの基準になる。

紙で作業する場合も、タイムシートの読み方は同じである。1コマ分の行に絵の番号を書き、同じ番号が3行続いていれば、その絵は3コマ表示される。3コマ打ちなら、番号は3行ごとに変わる。手を動かす前にこの表を埋めておくと、必要な枚数がその場で数えられる。枚数はタイムシートを書いた時点で確定するので、作業量の見積もりもここで立つ。

なお、レイヤーを分けるかどうかもタイムシートの段階で決まる。背景の上でキャラが歩くだけなら層は2つで足りるが、キャラの目と口だけを別に動かすなら、その分だけ層が増える。層を増やすと1枚あたりの作画量は減るが、管理する表は複雑になる。個人制作では、まず2〜3層で通せる設計にしておくと破綻しにくい。

原画と動画の分担

日本アニメーター・演出協会が厚生労働省の検討会に提出した資料では、原画は「絵コンテに沿って画面を設計し、演出が要求する動きや演技を絵に描いていく作業を担当」、動画は「原画をクリーンアップするとともに、原画と原画の間をつなぐ画(動画・中割り)を加えていく作業を担当」と説明されている。つまり動画工程は、原画を清書することと、原画と原画の間を中割りすることの2つに分かれている。

一人で作る場合はこの分業は消えるが、考え方としての分離は残したほうがよい。先に動きの要となる絵(原画にあたるもの)だけを描いて並べ、タイムシート上で表示時間を決めて再生してみる。この段階でタイミングが悪ければ、中割りを描く前に直せる。中割りを全部描いてからタイミングを直すと、描いた絵が丸ごと無駄になる。

中割りの「割り方」で速度が変わる

中割りは、単に2枚の絵の真ん中を描く作業ではない。どこを真ん中とするかで、動きの速さの印象が変わる。

中割りの詰め方には呼び名が付いている。一次資料での確認は取れなかったが、日本語版Wikipediaの「動画 (アニメ制作)」の項目では次のように整理されている。均等割りは隣り合う絵の間の変化が一定。先詰めは始めが遅く終わりが速い動き。後詰めは始めが速く終わりが遅い動き。両詰めはその組み合わせ。

これは「動きの緩急」の正体そのものだ。ディズニーの動画マンが体系化したアニメーションの12の原則にも、同じ内容が入っている。CLIP STUDIOのTIPSに掲載されている整理では、スローイン・スローアウトは「動きの最初と最後に多くのフレームを描画することで、『スローイン』と『スローアウト』の見た目を生み出す」原則とされ、タイミングは「特定のアクションにかかる描画の枚数は、再生したときのそのアクションの速度に変換される」と説明されている。

ここからは整理だが、初心者の動きが硬く見えるときのよくある原因のひとつが、全部を均等割りしていることだ。物は等速では動かない。手を上げる動作なら、動き出しに数枚、上がりきる直前に数枚を寄せ、中間は1〜2枚で飛ばす。中間を飛ばしても、人の目は補完してくれる。

同じ12の原則には、予備動作(動く前に逆方向へ少し引く)とフォロースルー(主要な動きが止まった後も続く動き)も含まれている。この二つを足すだけで、同じ枚数でも動きの印象は変わる。枚数を増やす前に、まずこの3つ(緩急・予備動作・フォロースルー)を疑ったほうがよい。

実際の割り方の手順を、動作を一つ動かす場合で書くとこうなる。まず動作の始点と終点を描く。次に、その動作の「一番おいしい瞬間」を1枚描く。手を振り上げる動作なら、振り上げきったところだ。この3枚で動作の骨格ができる。ここで一度タイムシートに並べ、表示時間を決めて再生する。動きの意図が伝わるなら、あとは足りないところにだけ中割りを足す。

この順序の利点は、途中でやめても形になることだ。3枚だけでも、タイミングさえ合っていれば動作として読める。中割りを足すのは品質を上げる作業であって、成立させる作業ではない。締切に追われたときに削れるのはここだと分かっていると、精神的に楽になる。

枚数の現実

先の厚生労働省の資料には、「1話あたりの実放送時間が23分程度のテレビアニメシリーズの場合、総動画枚数は約 3,000 枚から 10,000 枚超と相当の幅がある」「各話について数十名強程度で分担するのが一般的である」という記述がある。23分で3,000枚として、1秒あたり約2.2枚。3コマ打ちの8枚より大幅に少ない。

これは、画面の中で常に何かが動いているわけではないからだ。止まっている絵をそのまま何秒も表示するカット、口だけが動くカット、絵は1枚で背景がスライドするだけのカットが大量に含まれている。ここからは整理になるが、個人制作で枚数を抑える鍵もここにある。全カットを動かそうとしないこと。動かすカットを決め、それ以外は止め絵とカメラワークで持たせる。

動かすと崩れる、の原因

最後に、初心者が実際にぶつかる症状を挙げておく。ここは当サイトの整理である。

フレームごとに顔の大きさや形が変わる。 いわゆる「シェイク」で、線を毎フレーム描き直していることが原因。対処は、動かない部分を別レイヤー(別の層)に分けて固定すること。顔全体を動かす必要が無いなら、目や口だけを別セルにする。タイムシートが層で分かれているのは、まさにこのためだ。

動きが速すぎて何をしたか分からない。 8コマ(3分の1秒)未満で完結する動作は認識されにくい。動作の前後に、止まっている絵を数コマ足す。動きの前後に「溜め」と「余韻」があるだけで読める動きになる。

ループが繋がらない。歩きや旗のなびきなどで、最後の絵から最初の絵に戻るときに飛ぶ。最後の1枚が最初の1枚と同じになっていないか確認する。ループでは、最終フレームは最初のフレームの「1つ手前」であるべきで、同じ絵を両端に置くとそこだけ表示時間が倍になって引っかかる。

線が太くなったり細くなったりする。拡大率の違うキャンバスで描いた絵が混ざっている場合に起きる。作画は最初に決めた解像度で通す。

そもそも動きが思いつかない。実写の参考を撮るのが最短だ。自分でその動作をやってスマートフォンで撮り、コマ送りで見る。どこで速く、どこで止まっているかを見れば、中割りの詰め方は自然に決まる。トレースする必要はない。速度の配分だけを盗めばよい。

枚数を増やすのは最後の手段である。まずタイミング、次に緩急、その次に枚数。この順番で疑うと、少ない枚数でも動いて見えるところまでは辿り着ける。

出典

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