仕上げと投稿:レイヤー整理から書き出し・タグ付けまで
絵が描き上がってから、それが人の目に触れるまでには、いくつかの工程がある。ここを軽く見ると、時間をかけた絵が、荒れた画像として表示されたり、そもそも投稿できずに止まったりする。この記事は仕上げと投稿を扱う。描くこと自体については別の記事があるので、ここでは描き終えた後だけを書く。
仕上げは「直す」ではなく「整える」工程
仕上げに入ったら、形の修正はしない。これは効率の問題である。形が気になり始めると、いつまでも仕上げに入れない。「ここから先は直さない」という線を自分で引く。直したい箇所は次の絵の課題としてメモに残せばよい。
仕上げでやることは、おおむね四つである。レイヤーの整理、全体の色調整、書き出し、投稿の準備。順に見ていく。ここからの手順は整理であり、唯一の正解ではないが、迷ったときの型にはなる。
レイヤーを整理する
レイヤーは、描いている最中に増える。線画、下塗り、影、ハイライト、効果、それらの試作。整理せずに書き出すと、非表示のまま忘れられたレイヤーが残っていたり、逆に表示すべきレイヤーが隠れたままだったりする。
整理の手順は三段階でよい。第一に、名前を付ける。「レイヤー12」のままだと、後日この絵を修正するときに手が付けられない。線画・肌・髪・服・背景といった程度でよい。第二に、フォルダーにまとめる。パーツごとにまとめておけば、まとめて表示・非表示を切り替えられる。第三に、使っていないレイヤーを消す。試して捨てた塗り、消したはずの下描き。これらは容量を増やすだけでなく、うっかり表示されるリスクになる。
保存については、必ずレイヤーを保持した形式で一度保存する。ソフト固有の形式(.clip、.kra、.mdp など)や PSD である。統合した PNG しか手元に無いと、後から一箇所だけ直すことができない。統合はあくまで書き出しの直前に行う操作であり、作業ファイルを統合で上書きしてはいけない。ここは無料ソフトでも有料ソフトでも事情は同じで、レイヤー保持の保存形式と統合書き出しは主要なソフトには標準で備わっている。ただし簡易なアプリやブラウザ上のツールでは、レイヤーを保った保存ができないものもある。使っているソフトが何を保存できるのかは、最初の一枚を仕上げる前に確認しておきたい。
最後の色調整
レイヤーを整理したら、全体の色を見る。パーツごとに塗っている最中は気づかないが、統合してみると色がばらついていることがよくある。
有効なのは、全体の上に一枚レイヤーを重ねて、薄く色をかぶせる方法である。乗算で暗い色をかぶせれば全体が沈み、スクリーンやオーバーレイで明るい色をかぶせれば全体が明るくなる。この一枚があるだけで、ばらついた色に共通の色味が乗り、まとまって見える。かける量は「言われないと気づかない」程度でよい。強くかけると、下で丁寧に塗った色が消える。
確認の手順として、次の三つを挟むと事故が減る。縮小して見る(原寸で見ていると全体が見えない)、左右反転して見る(見慣れによる歪みの見落としが取れる)、時間を空けて見る(可能なら翌日)。この三つで気になった箇所だけを直し、他は触らない。
書き出し:形式と解像度
書き出しでまず決めるのは形式である。CLIP STUDIO の公式サポートは、Web にアップロードする際の形式について「JPEG・PNG形式が一般的ですが、念のためアップロード先が対応している形式をご確認ください」としている。
選び分けの目安は次のとおりである。PNG は劣化しない代わりにファイルが大きくなる。線がはっきりした絵、平坦な色面の多い絵、文字が入る絵では PNG が有利になる。JPEG はファイルが小さくなる代わりに圧縮による劣化が出る。写真のような階調の多い厚塗りでは JPEG でも目立ちにくい。迷うなら PNG で書き出し、容量制限に引っかかったときだけ JPEG に切り替えるのが安全である。
サイズについて、同サポートは「大体1000px以内に収めるとWebに適したサイズになりますが、Webサイトによってはサイズ上限を設めている場合もあるため、アップロード先の要項を確認の上、適正なサイズに設定してください」と述べている。また書き出し設定として、カラー作品は表現色を「RGBカラー」にすること、縮小の際は拡大縮小処理を「イラスト向き」にしてなめらかに縮小することを挙げている。
ここからは整理になるが、実際の運用としては、投稿用と保管用を分けるのがよい。保管用は縮小せずフル解像度で PNG。投稿用はそこから縮小して書き出す。投稿サイトの表示仕様は変わるので、元が大きいまま残っていれば後からいくらでも作り直せる。逆に、縮小した画像しか残っていないと、拡大しても画質は戻らない。
なお、印刷を前提にしない絵であれば、dpi の設定を気にする必要はほとんどない。Web での表示はピクセル数で決まる。印刷する予定ができたときに、その印刷所の指定に従えばよい。
投稿先ごとの制限を先に見る
投稿サイトごとに、受け付ける形式・容量・枚数が決まっている。書き出してから弾かれるより、先に見ておくほうが早い。以下は各サービスの公式ヘルプに書かれている内容である。
pixiv は、投稿できる画像形式を「JPG、GIF、PNG」(拡張子は .jpg/.jpeg、.gif、.png)としており、ビットマップ(.bmp)、アニメーションGIF、アニメーションPNG は投稿できないとしている。注意すべき記述として、複数の画像を拡張子が混在した状態で投稿すると「全てJPGに変換されます」とある。PNG で出した意味が消えるので、複数枚投稿するときは形式を揃えておきたい。容量については、イラスト投稿が1枚あたり32MB、マンガ投稿がマンガ全体で200MB、プロフィール画像が1枚あたり5MBと定められている。投稿枚数と1アカウントあたりの総量には上限を設けていない、とも書かれている。
ここで補足が要る。アニメーションGIF・アニメーションPNG が投稿できないのは、pixiv では動く作品が別枠になっているためであって、動く絵が出せないという意味ではない。同サイトには「うごイラ」(うごくイラスト)の機能があり、ヘルプはこれを「うごくイラストが投稿できる機能です」と説明している。素材は PNG 形式または JPEG 形式のイラスト、もしくは既存のアニメーションGIF。連番の静止画から作る場合は最大150枚で、1枚あたり8MB以下・合計30MB以下、アニメーションGIFの場合は上限16MB・500フレームまでとされている。また「うごイラへの投稿は、デスクトップ版から行うことができます。モバイル版、アプリ版からは投稿することができません」とも書かれている。
X(旧Twitter) の公式ヘルプは、受け付ける形式を GIF・JPEG・PNG とし、BMP や TIFF などは受け付けないとしている。写真は最大5MB、アニメーションGIF はモバイルで最大5MB・Web で最大15MB。1回の投稿に選べる写真は1〜4枚で、アニメーションGIF は他の画像と組み合わせられず1投稿につき1点までとなっている。
これらの数値は変わりうるので、投稿前に各サービスの公式ヘルプを確認するのが確実である。
タグとキャプション
投稿画面で扱う項目のうち、事実として先に知っておくべきものがひとつある。pixiv には、投稿作品が AI 生成作品かどうかを明示する設定がある。ヘルプによれば、対象はイラスト・うごくイラスト・マンガ・小説・小説シリーズで、投稿画面や編集画面から設定できる。
この設定は、単なる自己申告のラベルではなく、作品の扱いそのものを変える。ヘルプに書かれている効果は三つある。第一に、設定した作品は AI 生成作品ランキングの対象になる。第二に、AI 生成作品を「表示しない」設定にしているユーザーに対して、特定の範囲で表示されなくなる。第三に、作品に「AI生成」というステータスラベルが表示される。
つまり、申告するかしないかで、その作品が誰の画面に出るかが変わる。これは露出に直接影響するので、投稿者は事実として把握しておく必要がある。そのうえで、申告は任意の配慮ではなく、投稿画面で選択する項目として組み込まれている。生成AIをどこまで使うかは制作者が決めることであり、ここでその是非は扱わない。扱うのは、使ったなら投稿サイトの規定に沿って申告する、という一点である。
タグについては、pixiv のヘルプに「タグは1つの作品に最大で10件付けることができます」とある。また、投稿者以外のユーザーもタグを付けたり削除したりでき、投稿者は個別のタグをロックして編集を制限できる、とも書かれている。
10件をどう使うか。ここからは整理になるが、次の三層に分けて考えると埋めやすい。第一層は検索されるための一般タグ(「オリジナル」「イラスト」など、その作品が属する大きな分類)。第二層は内容を表すタグ(描いたもの、モチーフ、季節、シチュエーション)。第三層は自分の作品をまとめるタグ(自分だけが使う連作名や創作タグ)。第三層があると、後から自分の作品を一覧できるようになる。
タグを埋めることそのものが目的ではない。関係のないタグを大量に付けると、検索から来た人の期待とずれるだけで、評価にはつながらない。10件の枠を全部使う必要はない。
キャプションは、無くても投稿はできる。ただし一行でも書いてあると、見た人がその絵をどう受け取ればいいかの手がかりになる。書くとすれば、何を描いたか、どこを見てほしいか、シリーズの何枚目か、といった実務的な情報でよい。長い自己評価や言い訳は、たいてい絵の印象を下げる。
見てもらうための最低限
ここからは整理になる。露出の仕組みは各サイトの内部事情であって外からは分からないので、以下は「自分で実行でき、実行したかどうかを自分で判定できること」だけを挙げる。
1. 投稿の判定基準を先に決める。 完成度に納得できるまで待つと、いつまでも出ない。判定は「前節までの手順(レイヤー整理・色調整・書き出し)を通したか」で行う。翌日見て直したい箇所が残っていても、それが形の問題(次の絵の課題)なら出す。書き出しの事故(色が変、切れている)なら直す。この二つを分けるだけで、投稿できるかどうかは自分で決められるようになる。
2. 間隔は日数で決める。 「一定の間隔」では運用できないので、数字を置く。下限は月2枚、つまり2週間に1枚あたりから始めるのが現実的である。理由は二つで、月1枚だと前回の投稿から自分の中で連続性が切れること、週2枚以上だと最初の数か月で息切れしやすいことによる。守れているかどうかは、投稿日をカレンダーに付ければ判定できる。
3. タグの第三層を最初の投稿から付ける。 前節で挙げた三層のうち、第三層(自分の連作名・創作タグ)は1枚目から効く。10件の枠の配分としては、第一層に2〜3件、第二層に4〜5件、第三層に1〜2件あたりが目安になる。第三層があると、1枚を見た人がその1枚から他の作品へ移れる。第三層が無いと、見た人は1枚見て終わる。なお pixiv では投稿者以外もタグを編集できるので、自分の連作タグはロックしておくと消えにくい。
4. プロフィールに一行と、代表作への導線を置く。 何を描く人なのかが一行あるだけで、作品ページから来た人が他を見に行く理由になる。判定基準は「初めて来た人が、10秒で何の絵を描く人か分かるか」。
5. 投稿先ごとの書き出しを2種類用意する。 前節の制限のとおり、pixiv とX では受け付ける容量も枚数も違う。保管用のフル解像度から、pixiv 用(縮小せずそのまま、または長辺を大きめに)とX 用(5MB以内に収める)を書き出す。元ファイルが残っていれば、この作業は数分で終わる。
6. 過去作は消さない。 上達すると昔の絵を消したくなるが、枚数の積み上がりは、その人が描き続けていることの証拠になる。消して得られるものは少ない。
7. 3か月ごとに数字を見る。 1枚ごとの反応で判断すると振れ幅が大きすぎる。3か月分をまとめて、閲覧に相当する数字と、反応(ブックマークなど)に相当する数字を分けて眺める。閲覧が少ないならタグと投稿先の問題、閲覧はあるのに反応が少ないなら絵そのものの問題、という切り分けができる。この切り分けができるかどうかが、次に何を変えるかの判断材料になる。
つまずきどころと抜け方
書き出したら色が変わった——表現色の設定がRGB以外になっている可能性がある。書き出し時の表現色を確認する。
投稿したら画質が落ちた——サイトごとの再圧縮が入っている。投稿先の推奨サイズに自分で縮小してから上げたほうが、結果はきれいになりやすい。
ファイルが大きすぎて弾かれる——PNG から JPEG に切り替える、または縮小する。pixiv のイラストは1枚32MB が上限である。
複数枚投稿したら形式が変わっていた——pixiv では拡張子が混在すると全てJPGに変換される。形式を揃える。
投稿したのに反応が無い——タグが機能していないか、そもそも投稿の絶対数が少ない。1枚で判断せず、10枚出してから考える。
修正したいのにファイルが無い——統合済みの画像しか残していない。レイヤーを保持した作業ファイルを必ず別に保存する。