シルエットで見分けられるキャラクターの作り方

キャラクターを一体だけ作るなら、シルエットのことは考えなくても何とかなる。困るのは二体目からである。三体、五体と増やしていくと、どれも同じ背丈の同じ丸顔になり、髪型と服の色でしか区別できない状態になる。この記事は、そこを形の側から解く。色や設定資料の話は別の記事に譲り、ここでは輪郭だけで見分けがつくかどうかに絞る。

まず黒く塗りつぶして確かめる

シルエットの良し悪しは、議論する前に測れる。描いたキャラクターを一色の黒で塗りつぶし、その状態で何が分かるかを見ればよい。

CLIP STUDIO の講座でも、この手順が繰り返し出てくる。ある記事は、3Dモデルを新しいレイヤーで黒一色に塗りつぶし、そこから基本的なアイデアをスケッチのようにつかむ方法を示している。別の記事は、より直截に「シルエットだけでキャラクターについて何が起こっているか判断できるなら、そのデザインは良いデザイン」と書き、視覚的な明瞭度を確かめるためにキャラクターを黒で塗りつぶすことを勧めている。

この検査は、絵が下手でも成立する。線が拙くても、輪郭の外形は正直に出る。むしろ初心者ほど早い段階でやったほうがよい。塗りつぶした結果、ただの縦長の楕円にしか見えないなら、それは描き込みで解決する問題ではなく、形の設計をやり直す合図である。

やり方は簡単で、デジタルなら人物レイヤーの下に黒の塗りつぶしレイヤーを置き、人物レイヤーをクリッピングして真っ黒にする。アナログなら、下描きの輪郭の内側を鉛筆で潰す。所要時間は一分程度で、これを毎回やるだけで形への感度がまるで変わる。

丸・縦長・横長・突起という四つの当たり

シルエットを作るとき、いきなり細部から入ると必ず似通う。先に決めるのは、胴体の塊がどの型に属するかである。ここでは四つに絞って考える。丸い塊、縦に伸びた塊、横に広がった塊、そして塊から外へ出る突起。

丸・縦長・横長という三分類は、性格の記号としても働く。CLIP STUDIO の「キャラクターデザインのガイド」は、形と印象の対応を「円形:親しみやすく無害なものに。四角形:柔軟性がなく信頼できるものに。三角形:予測不可能で危険なものに」とまとめている。円は角がないぶん受け入れられやすく、四角は安定して見え、三角は尖った先端が視線を刺すので落ち着かない。この対応は絶対の法則ではないが、迷ったときの初期値としては十分に使える。

四つ目の突起が、実は最も効く。丸い塊は丸い塊としか比べられないが、そこから何かが一本出ていれば、出ている位置と本数と長さで無限に差がつく。角、耳、尾、笠、腕、傘、旗、触角。CLIP STUDIO の別の記事は、シルエットを作る際に「大きな形について考える」こととあわせて「髪の形、服装の形、キャラクターが持っているものなどについて考える」と書いている。持ち物は、輪郭の一部として数えてよい。

突起は「どこに」あるかで名前が決まる

同じ角でも、頭頂から真上に生えているのと、こめかみから斜め後ろへ流れているのと、顎の下から前へ出ているのとでは、まったく別のキャラクターに見える。突起は種類より位置のほうが情報量が大きい。

そこで、突起を決めるときは次の三つを紙に書き出す。第一に付け根の高さ(頭頂/側頭/肩/腰/足元のどこから出るか)。第二に方向(上・横・前・後ろ・下)。第三に本数(一本/左右対称の二本/不揃いな複数)。この三つが違えば、モチーフが同じでも輪郭は必ず分かれる。

このサイトの /aichara/ には二百体のキャラクター案が設定込みで並んでいるが、その各項目には必ず「シルエット」の欄が一文で入っている。たとえば同じ氷柱をモチーフにした三体でも、「上が太く下へ細る逆三角の一本」「横木から七本の氷柱が長さを違えて吊り下がり、簾のように並ぶ横広の形」「左右の太い氷柱と、そのあいだに下がる細い氷の列がつくる、くぐれる門の形」というように、縦長・横広・門型と塊の型そのものを変えている。モチーフを共有したまま形を分けるには、細部ではなく塊を動かすしかない、という実例として見てもらえばよい。

シルエットを一文で言い切れるかどうかは、そのままデザインの検算になる。「丸くてかわいい感じ」としか書けないなら、まだ形が決まっていない。

大きさと接地の仕方も輪郭に含める

輪郭というと胴の形ばかり考えがちだが、実際に見分けの手がかりになっているものがもう二つある。大きさと、地面への接し方である。

大きさは、単体で見ているかぎり比較できない。手のひらに載る一四センチの生き物も、腰かけられる六〇センチの台も、紙の上では同じ大きさに描ける。だから大きさは、必ず何かと並べた状態で決める。基準は人でなくてよい。湯呑み、椅子、扉、街灯のうち一つを決めて、全員をその横に置いた図を一枚作る。この一枚があるだけで、設定に書いた寸法が絵の中で機能するようになる。

接地の仕方は、輪郭の下端の形だと言い換えられる。脚が二本なのか四本なのか、脚がなく胴がそのまま床に着くのか、台座に載っているのか、浮いていて影だけが下にあるのか。ここが違うと、上半分が似ていても別物に見える。逆に、全員が同じ二本脚で同じように立っていると、上でどれだけ工夫しても揃って見える。

群れを設計するときは、この下端を意図的に配ると効く。三体なら、一体は脚で立ち、一体は胴が直接床に接し、一体は浮かせる。四体以上なら、そこに台座付きと多脚を足す。上端(頭の形)と下端(接地)の両方が散っていれば、中間がどれだけ似ていても混ざらない。

群れとして並べたときに散らす

一体ずつ見れば個性があるのに、並べると同じに見える。これは初心者に限らず起きる。原因は、一体ずつ順番に作っているからで、比較は最初から並べた状態でやらないと機能しない。

CLIP STUDIO の「キャラクターデザインの5つのヒント」は、この点をはっきり書いている。曰く、グループは「アウトラインだけを見ても簡単に区別できるはずです」。そのために特徴的な髪型・体型・服装を選ぶこと、そして各キャラクターが異なるカラーパレットを持つことが挙げられている。制服のように服装を揃えなければならない場合については、アクセサリーを足すことで、グループの一員であることを示しつつ個々を際立たせられる、という整理がされている。

実務としては、次の順で進めると散らしやすい。まず紙を横に使い、全員を同じ床の上に、同じ縮尺で、黒く塗りつぶした状態で並べる。次に背丈を階段状にずらす。三体なら高・中・低、五体なら等間隔にせず、二体を近づけて三体を離すといった不均等な配置にする。その次に胴の型を配り直す。全員が縦長になっていたら、一体を横広に、一体を丸に振り替える。最後に突起の高さを配る。全員が頭頂に何か生えている状態を避け、肩から出る者、足元だけが広がる者、何も生えていない者を混ぜる。

ここからは整理になるが、群れの人数が四体を超えたら、輪郭の差を先に決めてから中身を考える順序に切り替えたほうがよい。中身から作ると、設定は違うのに形は似ている、という最も直しにくい状態になる。

色を抜いても成立するか

シルエット検査には副産物がある。色に頼らない設計になる、という点である。これは見やすさの問題として、公的な指針でも扱われている。

川崎市総務局のカラーUDガイドラインは、色の見え方が誰しも同じではないことを前提に、「色だけでなく『形の違い』『位置の違い』『線種や塗り分けパターンの違い』などを併用」することを原則として挙げている。あわせて、白黒コピーにしても情報が伝わる設計を目指すこと、色数を絞ること、明度の差を明確につけることを勧めている。

キャラクターの見分けも、構造としては同じ問題である。赤い子と緑の子、という分け方だけで区別させている設計は、印刷物になった瞬間、あるいはグッズの型抜きになった瞬間に崩れる。逆に、輪郭で分かれていれば、色はその上に乗る補強として働く。色は差をつける手段ではなく、すでについている差を強める手段だと考えておくと設計が安定する。

三十分でできる練習

一度やっておくと効くので、手順を書いておく。用意するのは紙一枚と黒いペンだけでよい。無料の描画ソフトでもよいが、道具を選ぶ時間のほうが長くなるなら紙のほうが早い。

最初の五分で、モチーフを一つ決める。身の回りの物でよい。急須、街灯、傘立て、鍵束。次の十分で、そのモチーフから三体分の輪郭を、黒く塗りつぶした状態だけで描く。顔も線も入れない。このとき、三体の塊の型を「丸・縦長・横広」に強制的に割り当てる。次の五分で、三体それぞれに突起を一つずつ足す。付け根の高さを全員違う場所にする。

残りの十分で検算をする。三体を並べて、離れて見る。スマートフォンで撮って縮小表示すると、粗が一気に見える。どれか二体が似ていたら、似ているほうの一体の塊の型を変える。突起を足して直そうとしないこと。突起で解決しようとすると、飾りだけが増えて輪郭は似たままになる。

この練習は、絵を描く技術をほとんど要求しない。だからこそ、まだ一枚も完成させたことがない段階でやる価値がある。

つまずきどころと抜け方

塗りつぶすと全部同じ楕円になる——胴の型を割り当てていない。丸・縦長・横広を先に配ってから描く。

差をつけようとして飾りが増えていく——突起の数で解こうとしている。数ではなく付け根の位置で解く。飾りを一つ足したら一つ削る、という上限を自分に課すとよい。

一体ずつ見ると違うのに、並べると同じに見える——比較を最後にやっている。並べた状態で作り始める。

髪型と服の色でしか区別できない——髪と服は輪郭に出にくい。輪郭に出るのは、髪の外形と持ち物と体型である。色を抜いて確かめる。

シルエットを一文で説明できない——形が決まっていない。「上が丸く下がすぼまった雫の胴」程度の粒度まで言葉にできるまで、線を増やさない。

出典

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