キャラクターの配色の決め方:本体・差し色・目の三点から組む
キャラクターの色で行き詰まる人は、たいてい色が足りないのではなく多すぎる。髪、目、上着、シャツ、ズボン、靴、リボン、鞄、装飾。それぞれに好きな色を当てていくと、十色を超えたあたりで全体が濁り、どこを見ればいいのか分からない絵になる。この記事は、色を足す話ではなく減らして決める話をする。形の話は別記事に譲り、ここでは色そのものに絞る。
決めるのは三点だけでいい
最初に決める色は三つでよい。本体色、差し色、目の色である。
本体色は、そのキャラクターの面積の大半を占める色である。全身が一色の生き物ならその色、人型なら上下の服のうち広いほう、あるいは髪。遠くから見たときに「あの子は何色か」と聞かれて答える色が本体色にあたる。
差し色は、本体色に対してぶつける少量の色である。面積は小さい。ここが効いていないと全体がのっぺりする。CLIP STUDIO の制作記事では、スカートの色を変えるときに「暗い色を入れて画面を引き締める」という判断が示されている。差し色は必ずしも派手な色ではなく、引き締めるための暗い色でもよい、という点は覚えておくとよい。
目の色は、面積では最小なのに、印象では最大になる。人は顔を先に見る。目だけが本体色と無関係の色になっていると、そこが焦点になり、キャラクターの印象がそこで決まる。逆に、目を本体色の暗い版にすると全体がまとまり、代わりに焦点は弱くなる。どちらを取るかは意図の問題である。
この三点を先に決め、残りの色は三点から引く。上着を本体色にしたら、靴は本体色を暗くしたもの、鞄は差し色を鈍らせたもの、といった具合に派生させる。新しい色相を増やさず、明るさと鮮やかさだけを動かすのが原則になる。
色数を絞る理由
色を絞るのは、単に見た目が上品になるからではない。実務上の理由が三つある。
第一に、焦点が作れる。CLIP STUDIO の「キャラクターデザインのガイド」は、キャラクターには2〜3のメインカラーを使用し、視聴者の注意を引く特定の焦点に置くことを勧めている。色が二つか三つしかなければ、どこが目立つかを設計できる。十色あると、どれも同じくらい目立ち、結果としてどこも目立たない。
第二に、再現できる。同じキャラクターを何枚も描くとき、色数が少ないほうがぶれない。十色の配色を毎回思い出すのは無理だが、三色なら覚えていられる。
第三に、縮小に耐える。アイコン、スタンプ、グッズの小さな印刷。縮小すると細かい色は隣の色と混ざって消える。CLIP STUDIO の同じ記事は、参考資料シートについて「シンプルに保ち、後で簡単に描けるフラットカラーやパターンを使用するのが最善」だとしている。あとから何度も描くことが前提なら、色は描き手の負担そのものになる。
目安としては、主要な色を三色、そこから派生させた陰影用の色を各一〜二色、合計で六色前後に収める。これを超えたら、増えた色が本当に必要か、既存の色の暗い版で代用できないかを見直す。
HEXで確定させておくという意味
「青」と書いた設定は、次に描くときに再現できない。青は無数にあるからである。だから色は、名前ではなく値で持つ。
もっとも扱いやすいのは十六進数表記、いわゆるHEXである。MDN の解説によれば、#RRGGBB の形式で、赤・緑・青の各成分を 00 から FF(0〜255)の十六進数で表す。#f09 のような三桁の短縮形は #ff0099 と同等になる。同じ色を rgb() や hsl() で書く方法もあり、用途によってはそちらのほうが扱いやすい場面もあるが、設定として書き留めるだけなら六桁のHEXがいちばん短く、取り違えが起きにくい。
これは絵を描く人だけの話ではない。公的なキャラクター運用でも同じことをしている。多古町のマスコットキャラクターのデザインガイドマニュアルは、使用時の禁止事項として「指定色以外を使用しない」「縦横の比率を変えない」を明記している。色を指定するとは、指定から外れたものを外れたと判定できる状態にするということで、そのためには値で持つしかない。
このサイトの /aichara/ に並んでいるキャラクター案も、配色を「役割・HEX・補足」の三点セットで持たせている。本体、縁、差し色、目、といった役割の名前が先にあり、その各々に六桁の値が付く。役割を先に置いておくと、色を差し替えたくなったときに「どこを変えるのか」が一意に決まる。値だけを並べると、後から見て何の色か分からなくなる。
印刷やグッズを考えるなら、HEXに加えてCMYKも控えておくとよい。画面の色と印刷の色は同じにならないので、印刷側で一度出してみて、そこで合わせた値を別に持つ。ここは金額も工程も業者によって違うので、実際に頼む段階で確認することになる。
群れの中で色を被らせない
一体だけなら好きな色でよい。複数体を同じ画面に並べるなら、色は個体の識別情報になる。ここで被ると、設定をどれだけ書き込んでも読者は見分けられない。
配り方には順序がある。まず色相環を人数で割る。三体なら約一二〇度ずつ、五体なら約七二度ずつ離した位置に本体色を置く。この段階では鮮やかさや明るさを揃えておく。次に、そのままだと全員が同じ強さで主張するので、明度と彩度をずらす。一体を明るく淡く、一体を暗く濃く、一体を中間に。最後に差し色を配る。ここで、隣り合う二体の差し色が互いの本体色と近くならないかを確認する。
避けたほうがよい組み合わせについては、公的な指針が具体的に挙げている。川崎市総務局のカラーUDガイドラインは、色の見え方が誰しも同じではないことを前提に、赤と黒、赤と緑、パステル調(彩度の低い)色同士、濃い赤とこげ茶といった組み合わせを見分けにくいものとして挙げている。同ガイドラインによれば、日本の男性の二十人に一人、女性の五百人に一人が色弱者とされる。二人組のキャラクターを赤と緑で対にする設計は、直感的で分かりやすい反面、この点では弱い。
ここからは整理になるが、色相だけで分けようとするのをやめ、明度差を第一の手がかりにすると多くの問題が消える。同ガイドラインも、明度の差を明確につけること、色数を絞ること、そして色だけでなく形・位置・線種や塗り分けパターンの違いを併用することを原則として挙げている。キャラクターの場合、色を抜いて灰色にしたときに濃淡で分かれていれば、色の見え方によらず見分けがつく。
素材感と背景まで含めて決める
同じHEXの色でも、フェルトなのか、陶器なのか、ゼリーなのかで見え方は変わる。素材が決まっていないと、描くたびに艶の入れ方が変わり、結果として色そのものが違って見える。だから配色を決めるときは、素材の一語を隣に書いておく。「くすんだ橙色のフェルト」まで書ければ、次に描く人(半年後の自分を含む)が同じ質感に寄せられる。
素材は色の選び方にも跳ね返る。光をあまり返さない素材なら、明るい部分と暗い部分の差は小さくてよく、彩度も低めのほうが合う。逆に、内側から光っている設定なら、いちばん明るい部分を本体色より鮮やかにする余地が生まれる。艶の有無を先に決めておくと、陰影用の色を何色作るべきかも自動的に決まる。
もう一つ、背景を無視しないこと。キャラクターの色は単体で完成せず、置かれる場所との関係で決まる。白い背景でちょうどよかった淡い色が、実際の掲載面では沈む。逆に、暗い背景を想定して明るく作った色が、白地では浮いて痛い色になる。多古町のガイドマニュアルが、背景色によって見えにくくなる場所での使用を制限しているのも、同じ問題への対処である。
対策は単純で、配色を決めた段階で三種類の背景に並べて確認する。白、中間の灰色、黒。この三枚のどれでも輪郭が読めるなら、実用にはおおむね耐える。どれかで沈むなら、輪郭に一段明るい(または暗い)縁の色を持たせて逃がす。縁の色を一色持っておくのは、それ自体が配色設計の一部だと考えてよい。
手を動かす二十分
実際の手順を書いておく。無料の描画ソフトでも、表計算ソフトの塗りつぶしでも、色見本さえ並べば道具は何でもよい。
最初の五分で、本体色を一つ決める。悩むなら、そのキャラクターのモチーフになっている物の写真から色を拾う。金属なら金属の写真、苔なら苔の写真。写真から拾った色は、頭で考えた色より濁っていて、そのぶん実在感が出る。
次の五分で、その色の明るい版と暗い版を作る。彩度と明度だけを動かし、色相は動かさない。CLIP STUDIO の制作記事には、カラーサークルの右上に出るような彩度・明度の高い色を避け、中心のやや上・左寄り、または中心のやや下・左寄りあたりから選んでいる、という書き手の癖が紹介されている。鮮やかすぎる色は扱いが難しく、ひとまず中心寄りから取るのは実際的な逃げ道になる。
次の五分で、差し色と目の色を決める。差し色は本体色から離れた色相か、思い切り暗い色。目は、焦点にしたいなら本体色と別系統、まとめたいなら本体色の暗い版。
最後の五分で検算する。全体を灰色にして濃淡が分かれているか。縮小して見たときに色が混ざって消えていないか。制作記事にある「一部やたら目立ってしまう色がないか」という確認も、この段階でやる。問題がなければ、六桁のHEXを役割名とともに書き留めて終わりにする。
つまずきどころと抜け方
色が濁る——色相を増やしすぎている。三点に戻し、残りは明度と彩度だけで作る。
どこを見ればいいか分からない絵になる——焦点が設計されていない。最も鮮やかな色を一箇所だけに限る。
次に描いたとき色が違う——値で持っていない。HEXを役割名つきで控える。感覚で拾い直さない。
キャラクターを並べると誰が誰だか分からない——色相だけで分けている。明度差を先につけ、灰色にして確かめる。
設定の色と実際の絵の色がずれていく——描くたびに微調整しているため。調整したらその場で設定側の値を書き換える。台帳と絵のどちらが正か、を決めておく。
赤と緑で対にしたら見分けにくいと言われた——色の見え方の多様性の問題である。色相を変えるか、明度差をつけるか、形の差を足して色以外の手がかりを残す。