キャラクターの名前の付け方と、名前を確認する手順
キャラクターの名前は、作っているあいだは楽しい部分で、公開の直前になって急に怖くなる部分でもある。似た名前が既にあるのではないか。商標に引っかからないか。調べ方も分からないまま、なんとなく公開してしまう人は多い。
この記事は前半で名前の作り方を、後半で公開前に何をどこまで確認するかを扱う。先に断っておくと、この記事は法律の助言ではないし、どの名前が使えるかを判定するものでもない。最終的な判断は特許庁の審査や裁判所によるものであり、個別の案件は専門家に相談することになる。ここで書けるのは、確認の手順と、確認しても残る不確かさの範囲までである。
音数を先に決める
ここからしばらくは整理になる。名前を思いつくままに並べると、長さがばらばらになり、並べたときの印象が揃わない。先に音数の枠を決めてしまうと、選択肢が減って作業が速くなる。
扱いやすいのは三音から五音である。三音は短く覚えやすいが、既に一般語として存在している確率が高くなる。五音は情報を入れやすいが、呼びかけに使うと長い。四音は日本語では収まりがよく、二音+二音の組み合わせで作れるので量産に向く。
音の並びで気をつける点も、いくつか経験的に言える。同じ子音が三回以上続くと言いにくい。濁音を多くすると重く硬い印象になり、半濁音や小さい「っ」を入れると軽く跳ねる。最初の一音は、口の開く音(ア段・オ段)だと呼びかけやすく、閉じる音だとこもって聞こえる。ここに正解はないので、候補を五つ並べて声に出し、二回呼んで疲れないものを残す、という選び方で足りる。
長さの枠を決めるもう一つの利点は、後述する確認作業が楽になることである。名前が長いほど既存のものと一致しにくくなるが、短い名前ほど一般語や既存の商標と重なる可能性が上がる。短さは覚えやすさと引き換えに、確認の手間を増やすと考えておくとよい。
族で語幹を共有し、読みと表記は分けて持つ
複数体を作るなら、名前は一体ずつ考えるより、まとまりで設計したほうが早く、かつ揃う。方法は単純で、族や系統ごとに共有する語幹を一つ決め、残りを差し替える。
たとえば氷柱をモチーフにした一群なら、氷や垂れることを示す語を共有し、頭か尻にそれぞれの特徴を足す。歯車の一群なら、回ることや噛み合うことを示す語を共有する。共有部分が前に来ると族が先に読み取られ、後ろに来ると個体が先に読み取られる。どちらでもよいが、族の中で位置を揃えると規則性が伝わる。
このサイトの /aichara/ に並んでいるキャラクター案では、族ごとにこの共有が行われている。加えて、系統によって表記そのものを変えているのが分かる。生き物型はカタカナ、土地に付く守り手の型はひらがな、というように書き分けると、名前の一覧を見ただけで所属が読み取れる。表記の使い分けは、語幹の共有より弱い手がかりだが、費用がかからず効果は確実に出る。
注意点として、語幹を共有すると当然ながら名前どうしが似る。似せるのが目的なので狙いどおりではあるが、似すぎると読者が混同する。目安としては、共有部分が名前全体の半分を超えないようにする。四音なら共有は二音まで。ここを超えると、族の中で区別がつかなくなる。
名前は一つに見えて、実際には三つの情報がある。表記(漢字・カタカナ・ひらがな)、読み、そしてローマ字や英語表記である。この三つを最初から分けて記録しておくと、後の作業が楽になる。
読みを別に持つ理由は実務的である。後述する商標の確認では、見た目だけでなく読み方の近さが問題になる。読みを決めていないと、そもそも調べようがない。ローマ字表記が必要なのは、画像生成に渡すときや、海外向けの表記を考えるときで、ここで表記ゆれを放置すると、同じキャラクターが複数の綴りで散らばる。
このサイトのキャラクター案の台帳も、名前・読み・英語表記の三欄を必ず持たせている。三つを揃えるのに一分もかからないが、後から揃え直すのは面倒である。
既存作品と衝突していないかの確認
名前が決まったら、公開前に調べる。調べる先は大きく二つある。既に世に出ている作品やキャラクターと、登録されている商標である。
前者については、決まった検索の場所があるわけではない。検索エンジンで名前と、想定する分野の語を組み合わせて調べる。カタカナ・ひらがな・漢字・ローマ字の各表記で調べる。名前だけでなく、モチーフと組み合わせて調べる。この作業で見つかるのは有名なものに限られるが、少なくとも「よく知られた同名がある」状態は避けられる。
ここで判断が必要になるのは、同名が見つかったときである。分野がまったく違い、知名度も限定的なら、同名が並存していること自体は珍しくない。一方、同じ分野で、しかも広く知られているなら、避けたほうが安全である。名前だけの一致か、モチーフや設定まで似ているかでも話が変わる。名前が同じでも問題にならない場合と、名前が違っても問題になる場合の両方がある、というのがこの領域の面倒なところで、単純な一致検索だけでは片付かない。
なお、名前という短い語句それ自体がどう扱われるかは、一般に難しい論点である。ここでは断定を避け、実務としては次に述べる商標の側から確認しておくのが確実な手順になる、とだけ書いておく。
商標という別の物差し
商標制度は、名前を別の角度から見る枠組みである。特許庁の説明によれば、商標とは「事業者が、自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマーク」であり、商標権は「マークと、そのマークを使用する商品・サービスの組合せで一つの権利」となる。指定商品・指定役務によって権利の範囲が決まる、とされている。
この「組合せ」という点が、初心者がいちばん誤解しやすいところである。ある名前が商標として登録されていても、その名前があらゆる場面で使えないわけではない。特許庁の「出願しても登録にならない商標」の説明では、登録できないものとして「他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、指定商品・役務と同一又は類似のもの」が挙げられている。マークが似ていて、かつ商品・役務も似ている場合が問題になる、という二重の条件になっている。この商品・役務の区切りが、いわゆる区分である。
似ているかどうかの判断についても、目安が示されている。特許庁の商標出願に関する資料では、他人の商標と紛らわしいかどうかを、外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(意味)の三つから総合的に検討する、と説明されている。読み方が近いだけでも問題になり得る、という点は覚えておいたほうがよい。字面を変えれば安全、とは言えない。
もう一つ、識別力という条件がある。特許庁の説明では、普通名称、慣用商標、産地や品質を普通に表示するもの、ありふれた氏又は名称、極めて簡単でありふれた標章、そして「何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標」は登録できない、とされている。加えて、他人の氏名、名称又は著名な芸名・略称等を含む商標も、その他人の承諾を得ている場合を除いて登録できない。実在の人物の名前をそのまま使う設計は、この点でも避けたほうがよい。
調べる場所と、相談する場所
無料で調べられる公的な仕組みがある。J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)である。工業所有権情報・研修館が運営し、無料で、特許・実用新案、意匠、商標、審決に関する公報情報を検索できる。
商標の調べ方については、特許庁の資料に具体的な機能が挙げられている。「商標(検索用)」で文字を検索でき、「?」を使って前方一致・後方一致の検索ができること、「称呼(類似検索)」で読み方の似た商標を検索できること。同資料は、先に出願した方が優先されるため事前調査は必須である、と述べている。
手順としては、まず自分の名前をカタカナ・ひらがな・ローマ字で文字検索する。次に称呼で類似検索をかけ、読みの近いものを拾う。出てきたものについて、どの区分・どの商品役務で登録されているかを見る。自分が使おうとしている分野と重なっているかどうかが、確認の要点になる。
そのうえで、判断に迷ったら相談する先がある。INPIT知財総合支援窓口は、全国四十七都道府県に設置されており、相談は無料と明記されている。特許・商標などの権利化、知財戦略、ブランディングなどを相談でき、必要に応じて弁理士や弁護士と連携するとされている。ただし相談対象として挙げられているのは中小企業等、スタートアップ企業、大学・高等専門学校等、農林水産関連事業者であり、個人の趣味の創作がそのまま対象になるかは窓口に確認する必要がある。事業として展開する予定があるなら、早い段階で当たっておく価値はある。
意匠と、名前以外の部分
名前だけを見ていると見落とすが、キャラクターにはもう一つ、形の側の制度がある。意匠である。
特許庁の初心者向けテキストによれば、意匠とは意匠法第二条第一項に定める「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」である。登録の要件としては、工業的技術により同一物を反復生産できること(工業上利用可能性)、出願前に同一又は類似の意匠が国内外で公に知られていないこと(新規性)、そしてその分野の通常の知識を有する者が容易に創作できるものでないこと(創作非容易性)が挙げられている。
つまり、グッズや製品として立体化していく場合、名前とは別に形の側の確認が要る、ということになる。個人が絵を描いて公開している段階と、製品として量産する段階では、見るべき制度が変わる。ここは案件ごとに大きく違うので、製品化を考えた時点で専門家に当たるのが現実的である。
「使える」と言い切れない理由
ここまでの手順をすべてやっても、その名前が使える、と結論することはできない。理由を三つ挙げておく。
第一に、検索は網羅ではない。J-PlatPatで見つからなかったからといって、似た商標が存在しないことにはならない。出願されたが未公開の段階のもの、表記が違って検索に引っかからないものがある。
第二に、類似の判断が一致検索ではない。外観・称呼・観念を総合的に検討する、という枠組みは、機械的な文字列比較では代替できない。自分で「似ていない」と判断しても、その判断が通る保証はない。
第三に、商標以外の争点があり得る。商標の登録状況だけを見て安全と考えるのは、確認の範囲を狭く取りすぎている。
したがって、この記事が勧められるのは次までである。調べる。調べた結果を記録する。明らかに危ないものは避ける。事業として使うなら専門家に相談する。**「調べたから大丈夫」ではなく「調べたので、この範囲までは確認できた」**と書ける状態にしておくこと。記録を残しておくと、後で問い合わせが来たときに何を確認したかを説明できる。
つまずきどころと抜け方
思いつく名前が全部どこかで使われている——短すぎる可能性が高い。音数の枠を一つ増やすか、族の語幹と特徴語を組み合わせる方式に切り替える。
族の名前が似すぎて区別できない——共有部分が長い。名前全体の半分以下に抑える。
調べ方が分からない——まずJ-PlatPatで文字検索と称呼の類似検索を試す。無料であり、使い方は特許庁側の資料にも説明がある。
似た商標が出てきたが判断できない——区分と指定商品・役務を見て、自分の用途と重なるかを確認する。それでも迷うなら、判断を自分で下さずに相談先に持っていく。
実在の人物や既存作品から名前を借りたい——他人の氏名や著名な芸名等を含む商標は承諾がある場合を除いて登録できない、とされている。借りる方向ではなく、モチーフから作る方向に切り替えたほうが結果的に早い。