キャラクターの進化・成長段階の設計:何を残し、何を変えるか
一体のキャラクターが姿を変えていく設計は、作っていて楽しい。楽しいがゆえに、二段階目で盛りすぎ、三段階目で完全に別の生き物になる。出来上がったものを並べると、どう見ても親子でも同一個体でもない三体が並んでいる。
この記事は、その事故を避けるための設計手順を扱う。単体のシルエットや配色そのものについては別の記事があるので、ここでは段階のあいだの関係に絞る。
そもそも段階を分けるべきか
先に一つ確認しておきたい。すべてのキャラクターが成長段階を持つ必要はない。
記号として完結している型——単体で成立し、進化も相棒も持たないマスコットのようなもの——に無理やり三段階を作ると、たいてい第一段階が幼くなっただけの劣化版になる。土地や物に付いていて、その場所を離れられない型も同様で、段階を持たせると設定のほうが壊れる。段階が意味を持つのは、時間の経過や成熟がそのキャラクターの主題になっている場合に限られる。
判定は一問で足りる。「この段階の違いは、物語や設定の中で何かを説明しているか」。第一段階が未熟で第三段階が完成している、という以上のことを言えないなら、段階を分ける理由は薄い。逆に、冷めていく金属、伸びていく氷、噛み合っていく歯車のように、モチーフ自体に時間の向きが入っているなら、段階は自然に出てくる。
このサイトの /aichara/ でも、成長段階を持つのは生き物型だけで、記号として完結する型や、土地に付く守り手の型には段階が設定されていない。全員に同じ枠を当てはめないほうが、棚全体としては読みやすくなる。
段階を作らないと決めたなら、その代わりに表情差分や場面差分を増やすほうが実用的である。同じ姿のまま状況に反応するキャラクターは、段階を持つキャラクターより扱いが軽く、使う場面が多い。
先に「動かさない核」を一つ決める
進化を設計するとき、最初に決めるのは変化の内容ではない。全段階で絶対に動かさないものを一つ決める。これを先に置かないと、段階ごとに好きなだけ変えてしまい、繋がりが消える。
核にできるものは、おおよそ三種類ある。第一に、造形上の一点。角の枚数、目の形、必ずぶら下がっている何か。第二に、色相。鮮やかさや明るさは動いても、色の系統は変えない。第三に、輪郭の一部。頭の上端の形だけは全段階で同じ、といった決め方である。
この考え方は、公的なキャラクター運用にも通じる。多古町のマスコットキャラクターのデザインガイドマニュアルは、使用にあたっての禁止事項として「縦横の比率を変えない」「指定色以外を使用しない」を明記し、反転や加工も禁じている。運用の場面では、どこまでが同じキャラクターかを守るために、変えてはいけない範囲を先に文章化している。進化の設計も同じで、変えられる範囲を決めるとは、変えられない範囲を決めることに等しい。
核は少ないほどよい。三つも四つも固定すると、段階の差が出せなくなる。一つか二つで十分である。
三段階は「塊の型」を変えて作る
段階差を出すとき、初心者がまずやるのは装飾を足すことである。角を増やし、羽を生やし、模様を描き込む。ところがこれは、遠目にはほとんど差にならない。輪郭が同じままだからである。
CLIP STUDIO の「キャラクターデザインの5つのヒント」は、グループについて「アウトラインだけを見ても簡単に区別できるはずです」と書いている。同じキャラクターの成長段階も、並べて見せる以上はグループの一種であり、この基準がそのまま当てはまる。別の記事も、シルエットだけでキャラクターについて何が起こっているか判断できるならそれは良いデザインだ、として、黒で塗りつぶしての確認を勧めている。
そこで、三段階は塊の型で分ける。もっとも扱いやすい配分は次の三つである。第一段階は小さく、単純で、部品が少ない。第二段階は中くらいで、四肢や補助的な部品が生える。第三段階は大きく、塊が複数に分かれる、あるいは縦か横に大きく伸びる。
このサイトの /aichara/ には成長段階を持つキャラクター案が並んでいるが、たとえば溶けた金属をモチーフにした族では、第一段階が「上が丸く下がすぼまった雫の胴」、第二段階が「肩の落ちた丸い胴に短い四肢」、第三段階が「上面が水平に切り揃った台形の胴を四本の短い脚が支える」形になっている。雫から獣へ、獣から台へ。塊の型そのものが三回とも違う。一方で、下端から一滴が垂れかけたまま止まっている、という一点は三段階すべてに書かれている。これが核にあたる。
歯車をモチーフにした族も分かりやすい。第一段階は歯車が一枚立って短い脚が二本、第二段階は歯車が顔になり後ろで二枚が噛み合って四本脚、第三段階は歯車が塔のように縦に重なる。ここでは「歯が十一枚」という数が三段階すべてで揃えられている。数を核にすると、形をどれだけ変えても同一性が残る。
全部変えると別キャラになる
やってしまいがちな失敗を、はっきり名指ししておく。段階が上がるたびに、形も色も顔も大きさも変える。結果として、三体を並べたときに繋がりが読み取れなくなる。
この状態は、作っている本人には気づきにくい。順番に作っているので、隣接する二体のあいだには変化の記憶があり、繋がって見えるからである。読者にはその記憶がない。読者が見るのは、完成した三体が並んだ図だけである。
検算の方法は単純で、三体を黒く塗りつぶして並べ、まったく事前情報のない人に「この三つは同じ生き物の別の時期に見えるか」と聞く。聞ける相手がいなければ、一週間置いてから自分で見る。そのとき、核として決めた一点が三体すべてに見えるかを確かめる。見えなければ、核が形として弱いか、途中で捨てている。
逆の失敗もある。変え方が足りず、三体が単に大きさ違いになっている場合である。この場合は塊の型が動いていない。第二段階の胴を横に倒す、第三段階で部品を分割する、といった大きな変更を一つ入れる。
色は色相を残して動かす
配色は、進化のあいだで最も扱いを間違えやすい。段階が上がるたびに派手にしていくと、第三段階が原色だらけになって収拾がつかなくなる。
CLIP STUDIO の「キャラクターデザインのガイド」は、キャラクターには2〜3のメインカラーを使用し、視聴者の注意を引く特定の焦点に置くことを勧めている。段階が増えても、この上限は上げないほうがよい。増やすべきは色数ではなく、色の使い方である。
実際的な動かし方は三つある。ひとつは明度を動かす。若い段階を明るく、最終段階を暗く沈ませる(あるいはその逆)。ひとつは彩度を動かす。未完成の段階を鮮やかに、完成した段階を落ち着かせる。ひとつは面積の配分を動かす。第一段階では差し色が一点だけ、第三段階では差し色が縁を一周する、といった具合である。
色相そのものは動かさないのが基本になる。溶けた金属の例では、第一段階が明るい橙、第二段階が鈍い金、第三段階が冷えきった銀鼠へと移っていくが、これは「熱が冷めていく」という一本の筋の上を動いている。色を変えるなら、変わる理由を一行で言えるようにしておく。理由が言えない色替えは、たいてい後から破綻する。
段階ごとに大きさと役割を決める
三段階を作ると、それぞれの段階が何のためにあるのかが曖昧になりやすい。ここも先に決めておくと迷いが減る。
大きさは、段階間で二倍から四倍程度の差をつけると読み取りやすい。手のひらに載る大きさ、膝くらいの高さ、人が腰かけられる大きさ。数字を書くだけでなく、身近な物でたとえておくと、描く側が迷わない。
接地の仕方も段階で変えると効く。第一段階は胴が直接床に接する、第二段階は四肢で立つ、第三段階は脚が短くなって台のように据わる。輪郭の下端が変われば、上半分が似ていても別の段階に見える。
そして、性格や口調をどう繋ぐか。ここは形以上に見落とされる。第一段階が落ち着きのない喋り方で、第三段階が寡黙になる、という変化には筋が通る。だが決め台詞まで完全に別物にしてしまうと、繋がりの手がかりが一つ減る。語尾や口癖のうち一つだけを全段階で残す、という扱いが扱いやすい。
作る順序
段階を三つ作るとき、第一段階から順に作るのが自然に思えるが、実際には第一段階と第三段階を先に決め、第二段階を後から挟むほうが早い。
理由は、両端が決まれば中間の変化量が自動的に決まるからである。第一段階から順に作ると、第二段階でどこまで変えてよいかの基準がなく、たいてい変えすぎるか変えなさすぎるかになる。
手順としては、まず核を一つ決めて紙に書く。次に第一段階のシルエットを黒く塗りつぶした状態で描く。次に第三段階を、塊の型を変えて描く。この二つを並べて、核が両方に見えるかを確かめる。見えなければ、ここで核を選び直す。第三段階まで持ち越せない核は、核として弱い。
そのあとで第二段階を、二つの中間として描く。中間とは、両者を平均した形という意味ではない。第一段階に無く第三段階にある要素のうち、半分だけを持たせる、という意味である。四本脚が最終形にあるなら、中間形では短い四肢が生えかけている。塊が分割されるなら、中間形では分割の兆しだけがある。
最後に、三体を同じ床の上に同じ縮尺で並べた図を一枚作る。これが無いと、大きさの差が設定の中だけの話になる。
つまずきどころと抜け方
三段階が別の生き物に見える——核を決めていないか、途中で捨てている。全段階に共通する一点を紙に書き、三体すべてで指させるか確認する。
大きさ違いにしか見えない——塊の型が動いていない。第三段階で分割・伸長・接地の変更のうち一つを必ず入れる。
第三段階が派手になりすぎる——色数が増えている。メインの色は二〜三色に固定し、明度・彩度・面積で差をつける。
第二段階だけ浮く——両端を決める前に中間を作っている。第一と第三を先に確定させ、そのあとで挟む。
四段階目を足したくなる——三段階で足りているかを疑う前に増やしている。増やすなら、既存の三体を並べたときに空いている型(丸・縦長・横広のうち使っていないもの)を埋める形で足す。