傘
一本を二人で分け合う、あるいは貸し借りされるという行為が距離の近さを直接的に示すモチーフ。差し出すか差し出されるかという小さな選択に、その時点での関係性が表れる。
一本の傘を二人で分け合う、あるいは持たない相手に貸し与えるという行為が、それだけで身体的な距離の近さを直接的に示すモチーフである。相合傘は肩が触れる距離を必然的に作り、傘を差し出す・差し出されるという小さな選択には、その時点での二人の関係性がそのまま表れる。台詞で説明せずとも、傘の描写一つで親密さの度合いを伝えられる便利さがある。
傘というモチーフのもう一つの側面は、貸したまま返されない、あるいは忘れられたまま残るという「未回収」の性質である。返しそびれた傘、忘れ物として残った傘は、次の再会のための自然な口実になる。天候というコントロールできない要素に人物の行動を委ねられる点も、この モチーフの使い勝手のよさに繋がっている。
型のバリエーション
- 一本しかない傘を二人で分け合い、肩が触れる距離で歩く型。
- 傘を持たない相手に、自分の傘を差し出して自分は濡れていく型。
- 借りた傘を返す口実で、再会の約束を作る型。
- 忘れられた傘が、持ち主を特定する手がかりになる型。
- 同じ傘を長年使い続けることが、誰かとの記憶を象徴する型。
筋書きの例
- 突然の雨に傘を持たない同僚へ、自分の傘を差し出して自分は濡れて帰った人物が、後日その傘が丁寧に洗われて返ってきたことに、言葉にならない気持ちを抱く。
- 幼い頃に亡くなった祖母の形見である古い傘を、何十年経っても捨てられずに使い続けている人物が、雨の日にだけその傘を差す理由を、ある人に問われて初めて語る。
- 駅の忘れ物置き場に長く残されたままの傘を見つけた駅員が、持ち主を捜す張り紙を出すと、思いがけず持ち主から返信の手紙が届く。
組み合わせやすい題材
モチーフの「雨」、プロット型の「雨宿りの出会い」と切り離せない組み合わせであり、雨という天候と傘という道具がセットで機能する。舞台の「電車・駅」を重ねれば、忘れ物としての傘を自然に登場させられる。