約束を守れなかった側
破られた約束の被害者ではなく、守れなかった側の視点から罪悪感と向き合う過程を描くテーマ。守れなかった理由の正当性よりも、その後の生き方が焦点になる。
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白紙の国の帳簿係 第四話 升と秤
谷を上がってきた荷馬車は、行商人だった。塩がある。村には、売れるものが無い。遼は廃屋の屋根から古い釘を集め、塩と替える。秤は重さを量り、升は塩を量った。どちらも正しい顔をしていた。三十人の前で、遼は升の内側と外側に縄を当てる。数字が、合わなかった。

白紙の国の帳簿係 第三話 三十人
谷の向こうの煙は、二十七人だった。名を持たない者ばかりで、全員が痩せていて、全員が何かを隠している。芋は八つ、井戸は一つ。遼は紙を一枚使って、この土地で最初の決まりを書いた。盗まない、数を偽らない、出て行くときは言う。名は書けない。書けないから、印を書いてもらう。三十人めの男は、鍋の前で泣いた。

白紙の国の帳簿係 第二話 名を預かる
追手だった獣人が、村の入口の石に座ったまま動かない。食べ物を出せば食べる。名を訊けば「団長が持っている」。名を質に入れられた者は、自分の名で約束を結べない。経理課長の井原遼は、獣人を縛っている依頼の文面から一語を見つけ、立会人のいない紙切れの約束を、初めて自分の名で結ぶ。
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